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手で触れて、心を通わせる。一般社団法人日本ペットマッサージ協会が届ける「究極のスキンシップ」とは

手で触れて、心を通わせる。一般社団法人日本ペットマッサージ協会が届ける「究極のスキンシップ」とは
  • 今回お話を伺った方
    • 🖊️ 一般社団法人日本ペットマッサージ協会 参事・関西事務局長 近藤智香氏

      近藤 智香氏

      ペットマッサージの普及と人材育成に携わり、西洋医学のリンパマッサージと東洋医学の経絡・ツボの考え方を取り入れたケアを指導。一般の飼い主からペット関連の仕事に携わる人まで、幅広い受講者に向けて講座を行っている。

「家族同然のペットのために、もっと何かしてあげたい」「動物に関わる仕事で、自分にしかできないケアを身につけたい」。そんな思いを持つ方に知っていただきたいのが、一般社団法人日本ペットマッサージ協会(JPMA)です。

2005年1月に設立された同協会は、西洋医学のリンパマッサージと東洋医学の経絡(けいらく)・ツボマッサージを融合した独自のペットマッサージを体系化。国内外で多くの認定資格取得者を輩出しており、一般の飼い主さんからトリマー、動物看護師、獣医師まで、幅広い方が受講しています。認定試験合格者は期限なく無料で再受講できるなど、「資格を取って終わり」にしない学びの場づくりも大きな特徴です。

今回は、同協会の参事で関西事務局長、認定講師も務める近藤智香さんにお話を伺いました。
一般社団法人日本ペットマッサージ協会 公式サイトへ

近藤智香さんの画像

一般社団法人日本ペットマッサージ協会 参事・関西事務局長 近藤智香さん


ペットの長寿化で求められる「究極のスキンシップ」

――協会を立ち上げられた背景を教えてください。

近藤さん:協会が設立された当時は、西洋医学を中心とした獣医療がペット医療の主流でした。現在、ペットを取り巻く環境は大きく変わり、長寿化も進んでいます。そうした中で、愛犬・愛猫との関係や健康を維持し、より良い暮らしを支えていきたいという思いから、協会が生まれました。

――ペットの長寿化には、どのような理由があるのでしょうか。

近藤さん:医療の発達はもちろんですが、室内飼いが増えたことの影響が圧倒的に大きいですね。飼い主さんの意識も高まり、ワクチンの接種率も上がりました。その結果、以前の倍ぐらい長生きするようになったんです。

長寿化はとてもうれしいことですが、亡くなる原因も変わってきました。以前は伝染病などの感染症で亡くなる子が多かったのですが、今は生活習慣病や慢性疾患を抱える子が増えています。

だからこそ人間と同じように、緩和ケアや西洋医学と並行してできる何かが求められるようになってきました。

愛犬と飼い主が触れ合う画像

飼い主さんに身をゆだね、うれしそうな表情を見せる愛犬。


――そこで、協会では西洋医学と東洋医学を融合させたのですね。

近藤さん:はい。それぞれの良さを活かしながら、飼い主さんが日頃から体に触れることで小さな変化に気づき、コミュニケーションを重ねていく。そこに大きな意味があると考えています。

うちの協会では、ペットマッサージを「究極のスキンシップ」と位置づけているんです。

「マッサージをしてあげよう」という意識を持って触ると、体調の変化に早く気づくきっかけになります。

さらに、知識と意識を持ってマッサージをすることで、触れ方や体へのアプローチも変わるはずです。

もちろん、リラックスした時間をつくったり、心身のコンディションを整えることにもつながります。

西洋医学と東洋医学で、治すのではなく整えるケアへ

――具体的には、どのように両方を取り入れているのですか。

近藤さん:西洋医学の視点では、基礎解剖学で骨の仕組みを知り、リンパの理論を学びます。体の構造を理解したうえで、リンパの流れを意識したマッサージを身につけていく。

一方、東洋医学では経絡やツボ、陰陽五行の考え方を取り入れ、その子の全体的なバランスや状態をどう捉えるかを学びます。

どちらか一方の考え方に偏るのではなく、両方の視点を取り入れて統合的に捉えることを基本にしています。

――獣医療が「病気を治す」ものだとすると、ペットマッサージはどのような位置づけになるのでしょうか。

近藤さん:病気を治すという医療的な観点ではなく、「日頃から健康を意識し、健やかな状態を保つことをめざす」という考え方です。ですから、健康なときからでも、シニアになって不調が出てからでも取り入れられます。

年を重ねるとどうしても機能は落ちてきます。リンパマッサージは、リンパの流れを意識しながら、その子の状態に合わせてやさしく取り入れられるケアです。

東洋医学のマッサージは、筋肉をほぐすのとは少し違います。

その子の体質を知り、体全体のバランスを捉えておこなうマッサージです。人間でも「病院に行くほどじゃないけれど、なんとなくだるい」という日がありますよね。動物も年を取ったり、軽い不調があったりすると、同じようなことが起きます。

そんなとき東洋医学の考え方を少し知っているだけで、体を整えてあげられます。日々のケアが、体調の変化に気づくきっかけになるはずです。

マッサージの実演風景の画像

リンパの流れを意識しながら、やさしく体をほぐしていきます。


マッサージをしてもらって気持ちよさそうな猫ちゃんの画像

マッサージを受けて、リラックスした表情の猫ちゃん。

基礎から東洋医学、講師養成まで学べる講座体系

――受講コースが細かく分かれていますが、それぞれ、どのような方に向けたものですか。

近藤さん:「ペットマッサージ認定資格取得コース」は、愛犬・愛猫の健康管理にマッサージを取り入れたい一般の方はもちろん、学んだ知識や技術をペット関連の仕事に活かしたい方におすすめです。

基礎解剖学、リンパ、経絡、ツボ、状態に合わせたマッサージまでを段階的に学びます。基礎コースを修了した方が応用コースに進めます。しっかり基礎から学びたい方の入り口になるコースです。

「ペット東洋医学アドバイザーコース」は、さらに一歩踏み込んで、ペットのための東洋医学を本格的に学びたい方向けです。「この子の体質を、東洋医学ではどう考えるのか」という背景まで深く理解したい方におすすめですね。

座学が中心で、1日はオンライン、1日は対面受講の2日間のコースになっています。ペットの東洋医学を学べる場所はまだ少なく、獣医師さんにも喜ばれているコースです。

「プレミアムコース」は、当協会認定ペットマッサージセラピスト資格を取得した方を対象にした上級コースです。少人数制で、より実践的な技術を細かく確認していきます。

公認アカデミックコースを開催するために必要なスキルも学ぶので、将来的に教える立場をめざしたい方におすすめです。

講座で座学を学んでいる画像

専門学校での講義の様子。現在、全国20校以上の専門学校でも当会カリキュラムを導入しています。


――講座にはペットを連れて行けるそうですね。

近藤さん:「ペット東洋医学アドバイザーコース」以外ではモデル犬を用意していますが、お家の子を連れてきていただいても構いません。お仕事に活かしたい方は、お家のワンちゃんと一緒に活動することも多いので、同伴で来られる方も多いですね。

連れて来られない場合でも、モデル犬に触れながら実践的に学べます。

ワンちゃんと触れ合いながら実践で学んでいる画像

モデル犬に触れながら、実践的に技術を身につけていきます。

資格はゴールではなく、スタート

――再受講制度や公認講師制度を設けた背景を教えてください。

近藤さん:協会では、資格の取得をゴールではなく、スタートと考えています。そこから実践を積み重ねることをとても大切にしているんです。受講後も「あれはどうだったかな」と繰り返し学べるよう、認定試験に合格した方は、期限なく無料でいつでも再受講していただけるようにしました。

――無期限というのは、珍しいですよね。

近藤さん:そうですね。「10年ぶりに来ました」という方もいます。相手は生き物ですから、どこでどんな疑問が出てくるかわかりません。飼い主さんたちもいろいろな不安や疑問が出てくると思うんですよね。新しい子をお迎えしたときに、再受講に来られる方もいらっしゃいます。

再受講の方が多いので、講座では毎回、新しい話を一つでも持ち帰ってもらいたいんです。何十年も同じ知識を伝えるのではなく、時代に合わせて学びの内容や技術を更新していく必要があると考えています。

再受講制度の案内画像

――公認講師制度とは、どのようなものですか。

近藤さん:基礎コースにあたるアカデミックコースを開催できる資格です。

公認講師が協会に申請して開催する講座は「公認アカデミックコース」として協会のホームページに掲載します。受講を希望する方に、地域や時期がわかりやすく伝わるようにしているんです。個人でおこなうのではなく、協会のサイトから申し込んでいただき、協会と紐づけて運営する形をとっています。

公認講師の方は、年に何回かブラッシュアップのために率先して学びに来てくださっている方が多いですね。マニュアルやテキストに加えて、その時々の旬の話もアップデートしている講師が教えているので、安心して受けていただけます。

公認講師のもとで学んだ方も、協会公式の応用コースへ進むことができますし、資格を取れば再受講制度も使えます。

上手なセラピストとは、手で対話できる人

――資格を取得した方は、どのような場面で活躍していますか。

近藤さん:一番多いのは、自分の家の子にマッサージをしてあげたい、コミュニケーションを取りたいという一般の飼い主さんです。

トリマーさん、ペットシッターさん、トレーナーさん、動物看護師さんなども多いですね。動物と接する仕事をしている方が、オプションメニューとして取り入れていらっしゃいます。

ドッグカフェさんから「常連さん向けにマッサージイベントをやってくれない?」という依頼も多いんですよ。当協会のマッサージは、健康なときから体を整えることが目的なので、元気な子にも意味があります。

動物病院のパピー教室に取り入れたり、寝たきりのシニア犬に合ったマッサージを提案したり、ケースに合わせた活用法を展開していけるので、活躍の場は幅広いですね。

――基礎コースのみで終えられる方も多いのでしょうか。

近藤さん:基礎コースだけで終える方もいますが、状態別・症状別のケアを基礎と応用に分けて段階的に学ぶので、結果的にほとんどの方が応用に進みます。

そのうちに「セラピストに挑戦してみようかな」という方も出てきます。お友達のワンちゃんから少しずつ始めたり、シッターさんのように訪問マッサージをしたりと、個人でも活動の場をつくれる分野だと感じます。

――講座を通して、印象に残っている受講生さんの変化はありますか。

近藤さん:受講生さんは最初、手技を覚えよう、知識を勉強しようと必死な様子で来られます。でも、講座のなかで実践を重ねるうちに、だんだん意識がワンちゃんのほうに向いていく。観察すること、触れることを大事にしてくれるようになるんです。その変化が目に見えるのが、とてもうれしいですね。

講座ではいつも「上手なセラピストは、技術が上手な人ではないんですよ」とお伝えしています。テクニックがすごいから良いセラピストなのではなく、状態を常に感じ取りながら触ってあげられる人が、最上級のセラピストです。

手でコミュニケーションが取れるような触り方をしていると、ワンちゃんに後ろをついて歩かれるほどのセラピストになれるんですよね。

ワンちゃんと一緒に講座を受けている画像

お家の子と一緒に受講できるから、学びがより身近になります。


――ワンちゃんのほうからも、気持ちを伝えてくれるのですね。

近藤さん:ワンちゃんは本能的な部分が優れているので、ただなでられているのではなく、マッサージをしてもらっているとわかるんだと思います。マッサージを続けていたら、触ってほしいところを自分から出してくる子もいるんですよ。

ワンちゃんをマッサージしている画像

マッサージをしてもらい、目がとろんとしているワンちゃん。表情から気持ちよさが伝わってきます。

専門学校から海外まで、広がる学びの場

――専門学校との提携も増えているそうですね。

近藤さん:動物の専門学校で、年間カリキュラムとしてマッサージの基礎と応用を取り入れている学校が増えています。卒業後に勤め先から、勉強してくるよう言われる環境が多かったため、「それなら在学中に取らせておこう。持っていると就職にも有利になる」という学校さんの考えで今の流れになりました。

――海外での展開についても教えてください。

近藤さん:中国、台湾、タイ、韓国などで開催しています。東洋医学のルーツは中医学なので、中国が本場のように思われます。しかし、愛犬や愛猫をコンパニオンアニマルとしてどう捉えるかという点では、日本のほうが進んでいるんです。

東洋医学という意味では逆輸入になりますが、愛犬・愛猫をどう癒し、どうケアするかを日本の講師が伝えることの需要はとても大きいですね。

台湾での認定資格取得講座開催のお知らせの画像

――学びの質を保つうえで、大切にしていることがあるそうですね。

近藤さん:知識を学ぶことと、実際にできることのあいだに差が生まれないようにすることです。技術だけでなく、動物の反応を観察する力を育てることがとても重要だと考えています。机の上の勉強だけで終わって、いざ動物に触れるときに何もできない、ということにならないよう意識しています。

学びの質を保つことと、多くの方に学んでいただける環境をつくること。その両方を丁寧に積み重ねていくことが、協会のテーマだと思っています。

実際に犬と触れ合ってマッサージを習得している画像

実践に近い講義で、動物に触れながら技術を身につけられるのもうれしいポイント。

まずは「うちの子を知りたい」から始めよう

――これからのペットウェルネスの分野で、協会が果たすべき役割をどう考えていますか。

近藤さん:病気になってからではなく日頃から飼い主さんが、愛犬・愛猫の体と健康に目を向ける文化を広げていきたいですね。もちろん、病気や体の異常があるときは獣医師による診断と治療が必要です。

でも、動物と一番長い時間を過ごしている飼い主さんが、日常のなかで小さな変化に気づく意識を持つ。そのきっかけをつくることが私たちの役割だと考えています。

――最後に、学びを始めるか迷っている方へメッセージをお願いします。

近藤さん:「興味はあるけれど、私にできるかな」「資格を取っても、仕事にするかわからない」と迷っている方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

最初から資格を取る、仕事にすると決めなくても大丈夫。「うちの子のことをもっと知りたい」「何かしてあげられることを増やしたい」。そんな思いから始めてみてください。大切なのは、目の前にいる家族をもっと知りたいという気持ちです。

ペットマッサージは、言葉を話さない愛犬・愛猫と、手を通してコミュニケーションを取る方法の一つです。ぜひ、触れることから一緒に始めましょう。

――近藤さん、貴重なお話をありがとうございました。
一般社団法人日本ペットマッサージ協会 公式サイトへ

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この記事を書いた人
森田かえ

森田かえ

教育・子育て・暮らしを中心に執筆する取材ライター。 人の想いや背景を丁寧に聞き取り、言葉にすることを大切にしている。 子どもや家族、地域にまつわるテーマを軸に、読み手の暮らしに届く文章を心がけている。 お酒を飲みながら推しの番組を見る時間が、ささやかな幸せ。

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