そんな不安を抱えながらも、日本の家庭料理を通して世界中の人々と交流できる場所があります。
一般社団法人外国人向け料理教室協会では、日本の家庭料理や食文化を外国人に伝える「わしょクック和食認定講師」を育成しています。
2016年の設立以来、20,000名以上の外国人に和食と日本文化を伝え、現在では世界80拠点に認定講師ネットワークを展開。日本の家庭料理を通じた国際交流の場を広げ続けています。
今回は、一般社団法人外国人向け料理教室協会の代表理事・富永紀子さんに、協会設立の背景や講座の特徴、受講生が人生の新たな一歩を踏み出していく様子、そして日本の家庭料理を世界へ届ける思いについて詳しく伺いました。
「料理が好き」「外国の方と交流してみたい」「自分の経験を誰かの役に立てたい」。そんな思いを形にしたい方へ、新しい働き方や生き方のヒントをお届けします。
日本の家庭料理を世界へ!

一般社団法人 外国人向け料理教室協会 代表理事 富永紀子さん
——協会設立のきっかけを教えてください。
富永さん:もともとは、外国人向け料理教室「わしょクック」を運営していました。
2014年に教室をスタートし、外国の方へ日本の家庭料理をお伝えする活動を続ける中で、「この素晴らしい日本の家庭料理を、もっと世界へ届けたい」という思いが強くなったんです。
ただ、自分1人で伝えられる人数には限界があります。それなら、一緒に日本の食文化を届けてくださる講師を育てようと思い、2016年に一般社団法人外国人向け料理教室協会を設立しました。
料理だけではなく、日本の食文化や食育、暮らしの知恵、そして日本人が大切にしてきた精神性まで伝えられる人を育てたいという思いで活動しています。
——富永さんご自身は、日本の家庭料理のどのようなところに魅力を感じていますか?
富永さん:実は、その原点になったのはニュージーランドでの体験でした。現地のご家庭に招かれて家庭料理をごちそうになったとき、レストランでは味わえない温かさを感じたんです。
現在はニュージーランドを拠点に活動し、日本と海外をつなぐ和食文化の普及に取り組んでいる。
外国の方は寿司や天ぷらはよく知っていますが、日本人が普段食べている家庭料理や、一汁三菜の食卓、季節ごとの食文化までは、まだあまり知られていません。
そこで、日本にも同じように世界へ伝えたい文化があると思うようになりました。

外国人向けに日本の家庭料理や文化を教えている
——家庭料理だけではなく、日本文化も一緒に伝えているのですね。
富永さん:例えば、日本には四季があり、その季節ごとの食材を楽しむ文化があります。また、お正月や節分など、行事と食事が密接につながっています。
「いただきます」という言葉や、お箸を横向きに置く理由など、日本人にとっては当たり前になっていることも、外国の方にとってはとても新鮮なんですね。
そうした背景や意味までお伝えすると、皆さん本当に喜んでくださいます。料理を教えるというより、日本の暮らしや文化そのものを体験していただいているような感覚ですね。
仕事につながるまで伴走する育成カリキュラム
——「わしょクック和食認定講師」とは、どのような資格なのでしょうか?富永さん:外国人向け料理教室の先生として活躍するための資格です。
実は、日本人に料理を教えることと、外国人に料理を教えることは全く違います。日本人にとって料理教室は「学び」の場ですが、外国人にとっては日本文化を体験する「イベント」のような意味合いが強いんですね。
そのため、料理を教える技術だけではなく、国・地域ごとの価値観や食習慣、喜んでもらえるレッスンの進め方なども学んでいただきます。

外国の方も楽しみながら料理に親しめる
——講座にはどのような特徴がありますか?
富永さん:一番の特徴は、「資格を取って終わり」ではないことです。
講座では、外国人向け料理教室の開き方だけではなく、コンセプト設計やブランディング、集客方法、料理教室で使う英語、調理実習まで幅広く学びます。さらに、卒業後も約1年間伴走しながらサポートを続けています。
実際に料理教室を開講したり、講師として活動したりするところまで見据えているので、「学んだけれど活かせなかった」ということがないようなカリキュラムを目指しています。
——現在はどのような講座を開講されているのでしょうか?
富永さん:まず入口となるのが「外国人向けお料理教室の始め方 無料オンライン講座」です。
20,000名以上の外国人に和食を伝え、世界80拠点に認定講師ネットワークを広げてきた経験をもとに、外国人向け料理教室の始め方をお伝えしています。
外国人向け料理教室の需要や可能性、実際に教室を始めるまでのステップ、英語に自信がない方でも活動できる理由などを分かりやすくお伝えしています。
無料オンライン講座の詳細はこちら
さらに、わしょクック和食認定講師となって外国人に和食と食文化を教える教室を運営したり、わしょクックの主催する教室の講師として活動したい人向けの「和食認定講師育成カリキュラム」も用意しています。

和食認定講師育成カリキュラムの詳細はこちら
それぞれ目指す働き方に合わせて選べるため、ご自身のライフスタイルや目標に合わせて学びを深めていただけます。
料理だけでなく、英語や集客まで丁寧にサポート
——多くの方が受講されている理由を教えてください。
富永さん:やはり、「学んだことを実際の仕事につなげられる」という点だと思います。
資格講座は取得して終わってしまうケースも少なくありません。しかし、私たちは資格を活かして活躍するところまでサポートしたいと考えています。
これまで認定講師は延べ500名以上誕生し、現在も約80名の会員が活動しています。
講座で知識を学ぶだけではなく、「実際に一歩踏み出せる環境」があることが、多くの方に選んでいただいている理由なのではないかと思いますね。
活躍の舞台は国内外へ
——資格取得後は、どのような場面で活躍されているのでしょうか?富永さん:料理教室開講カリキュラムを修了された方は、ご自宅で外国人向け料理教室を開講される方が多いですね。
講座の中では、料理を教える技術だけではなく、集客方法や企業・団体への企画提案の方法までお伝えしています。
そのため、オンライン旅行予約サイトを活用して海外のお客様を集客したり、企業や自治体とコラボレーションしたりと、ご自身の強みを活かしながら活動されている方がたくさんいらっしゃいます。
資格取得後も幅広い場所で活躍できる
——協会としても、認定講師の活動をサポートされているのですね。
富永さん:そうですね。わしょクックでは、東京・大崎を中心に料理教室を運営しているため、認定講師の皆さんには講師としてレッスンを担当していただく機会もあります。
少人数のプライベートレッスンから、50名規模の団体レッスン、企業研修まで、本当にさまざまな仕事があります。
さらに、料理教室だけではなく、企業向けの撮影や取材協力、動画制作など、和食文化を伝える活動にも携わっていただいています。
資格を持っているだけではなく、「実際に教えている」という経験を積めることは、認定講師の皆さんにとっても大きな自信につながっていると感じています。
受講生の新たな一歩を後押し
——どのような方が受講されることが多いのでしょうか?富永さん:受講されるのは、ほとんどが女性です。
大きく分けると2つのタイプがあって、1つは子育てがひと段落し、「これからの人生で何か新しいことに挑戦したい」と考えている50代前後の主婦の方。もう1つは、会社員として働きながら、「いつか好きなことを仕事にできたら」と考えている方です。
皆さん料理は好きだけど、「私も先生になれるのかな」と自信を持てずに来られる方が少なくありません。でも、私はいつも「普段ご家族に作っている家庭料理こそ価値があるんですよ」とお伝えしています。
調理師免許や特別な技術がなくても、日本の家庭料理を毎日作ってきた経験そのものが、外国の方にとっては大きな魅力になるんです。
——受講生の皆さんには、どんな変化が生まれていますか?
富永さん:料理を学びたいというより、「新しい人生を始めたい」という思いで来られる方が多いですね。講座では最初に、1人ひとりの夢や目標をお聞きします。
その思いに寄り添いながら伴走していくので、「人生が変わりました」「新しい一歩を踏み出せました」と言っていただくことも多く、私自身も大きな励みになっています。
資格やスキルだけではなく、「自分にもできる」という自信を持って卒業してくださることが、一番嬉しいですね。
自信を持って外国の方へ教えている
——特に印象に残っている受講生のエピソードはありますか?
富永さん:一番印象に残っているのは、お寿司職人の男性です。もともと技術は素晴らしかったのですが、人前で話すことや英語には苦手意識がありました。
それでも「外国の方へ寿司を教えたい」という強い思いを持ち続け、講座でも一つひとつ経験を積み重ねていきました。
その後、フィリピンで現地のシェフへ寿司を教えるプロジェクトに参加する機会があり、最初は私が通訳として隣に立っていました。
ところが、回を重ねるうちに、少しずつ自分の言葉で伝えられるようになっていったんです。
ある時、「英語が完璧じゃなくても、伝えたい気持ちがあれば伝わる」ということに気づき、自ら積極的に話せるようになりました。今では海外で指導を行ったり、講師としてさまざまなレッスンを担当したりと、大きく活躍されています。
知識や資格だけではなく、一歩踏み出す勇気が人生を変える。その姿を間近で見られたことは、私にとっても忘れられない経験です。
未来へ向けて「命をつなぐ食卓」を
——今後、協会としてどのような未来を描いていますか?富永さん:これまでは外国人向け料理教室を通じて、日本の家庭料理や食文化を世界へ届けることを中心に活動してきました。
でも、ニュージーランドで暮らすようになって改めて感じたのは、海外の方は日本文化や日本食を本当に大切に思ってくださっているということです。
一方で、日本では食生活の欧米化が進み、昔ながらの家庭料理や食卓の文化に触れる機会が少なくなっているようにも感じています。
そこで今年から新たに、協会のスローガンとして「命をつなぐ食卓」を掲げました。
外国人向け料理教室だけではなく、子どもの食育やウェルネスなども含め、「食卓を囲む時間」の価値をもっと多くの方へ届けていきたいと考えています。
現在はニュージーランドをはじめ、オーストラリアのメルボルンやシドニーにも活動の輪が広がっていますが、日本国内でも同じ思いを持つ仲間を増やし、日本の家庭料理の魅力を未来へつないでいきたいですね。

国内外へ向けて命をつなぐ食卓を発信
——最後に、受講を検討している方へメッセージをお願いします。
富永さん:もし「外国の方に料理を教えてみたい」「料理を通して国際交流をしてみたい」という気持ちがあるなら、できない理由よりも、その先の未来を想像してほしいと思います。
「英語が苦手だから」「料理に自信がないから」「SNSが得意ではないから」と、不安を感じる方はたくさんいらっしゃいます。
でも、私はよく「おにぎりが握れれば大丈夫ですよ」とお話ししています。
普段の暮らしの中で作ってきた家庭料理や、ご自身が積み重ねてきた経験は、外国の方にとってかけがえのない価値になります。
完璧である必要はないので、料理を通して誰かが笑顔になり、日本の文化を好きになってくれる。その喜びを、1人でも多くの方に味わっていただけたらうれしいですね。
——富永さん、素敵なお話をありがとうございました!
日本の家庭料理で世界をつなぐ
日本の家庭料理には、おいしさだけでなく、その土地ならではの文化や暮らし、相手への思いやりが詰まっています。外国人向け料理教室協会では、そんな日本の食文化を伝える技術だけでなく、自分らしい教室づくりや仕事につなげる力まで、実践を通して学べます。
料理が好きな方や外国の方との交流に興味がある方はもちろん、「これまでの経験を活かして新しいことに挑戦したい」という方にも、新たな可能性を広げてくれる学びです。
日本の家庭料理を通して、世界とつながる一歩を、ぜひ踏み出してみてはいかがでしょうか。