テリーヌは、小さな四角い型の中に食材を自由に組み合わせて作る、まるでアート作品のような料理。見た目の美しさはもちろん、素材の組み合わせ次第で無限の表現を楽しめる奥深い魅力があります。
同協会では、全国どこでも手に入る身近な食材を使い、「誰でも再現できること」にこだわったレシピを100種類以上展開。趣味として楽しみたい方から、将来的に講師として活動したい方まで、多くの方がテリーヌの世界を学んでいます。
今回は、同協会代表理事のカンナさんに、テリーヌの魅力や協会設立の背景、講座づくりへの想いなど詳しく伺いました。手のひらサイズの小さなアートの世界をぜひご覧ください。
心を満たす料理への想いから生まれた協会

同協会代表理事のカンナさん
――協会の設立年と、これまでの受講生数を教えてください。
カンナさん:2016年に設立し、今年で10周年になります。これまでのレッスンを通じて、延べ1万人以上の生徒さんに料理をお伝えしてきました。
――10周年おめでとうございます!協会を立ち上げられた背景も教えていただけますか?
カンナさん:ありがとうございます。私は以前、ワインの輸入会社で長く勤めていたんです。
レストランへの営業をする中で、ソムリエやシェフと話す機会が増えていきました。私自身、もともとワインが好きだったこともあり、ワインと料理は切っても切れない関係だと感じ、会社を辞めてワインサロンを立ち上げたんです。
当時の私は特別料理ができるわけでもなく、習ったこともありませんでした。
それでも、ワインサロンでおつまみをお出ししていたところ、生徒さんから「教えてください」と一声をいただいて。ワインサロンから料理をお伝えする形になりました。
料理レッスンを開きながら独学で学び続け、ありがたいことに遠方からも生徒様にお越しいただける教室へと成長させていただきました。
また、当時は今ほどSNSが普及しておらず、料理研究家として活動したいと思った時、自分が何をどこまでできるかを証明するものがなかったんですね。
‘’料理研究家‘’は、特別な資格があるわけではなく、誰でもいつでも今日から名乗ることができる、いわば自称の資格です。それを自称ではなく、きちんと認められた資格を作ろうと思ったのが、最初のきっかけでした。
――「おもてなし料理協会」というお名前に込めた想いはありますか?
カンナさん:普段の料理はどうしても義務という側面が強く、家族を食べさせるためや、自分のお腹を満たすためのものになりがちです。
おもてなし料理は、その義務を超えて、純粋に料理を楽しむ世界だと考えています。
お正月のおもてなしに。なますも昆布巻きも美しいテリーヌへ。
お腹を満たす料理ではなく、心を満たす料理を。そんな想いを協会の名前に込めました。
おでんもスイカもアートになる、テリーヌの魅力
レッスン風景
――テリーヌスペシャリスト講座について、他の料理教室や資格との違いを教えてください。
カンナさん:テリーヌは一般的な料理ではなく、アートの世界だと思っています。わくわく楽しみながら自分の「好き」を表現する料理で、誰かを喜ばせるための料理なんです。
私はフランス料理の枠を超えて、和や中華などのバラエティに富んだテリーヌをたくさん作っています。王道のテリーヌではない、新しいデザインや他にはないオリジナルの発想のものを作っているので、そこが生徒さんに喜ばれているのかなと感じています。
――シンプルなパウンド型で、旬の食材を使うスタイルにこだわる理由は何かありますか?
カンナさん:オンラインで受講されている方もいるので、全国どこでも手に入る材料で、絶対に作れることにこだわっています。
テリーヌの本はときどき見かけますが、結局眺めるだけで、難しくてなかなか作れないレシピが多いと生徒さんからもよく聞きます。
私自身、最初は独学で作ってみたのですが、型に詰めるまではできても、型から出してカットするとぐちゃぐちゃに崩れてしまって、何度も挫折した悔しい経験があります。
テリーヌは見た瞬間に、「私には作れなさそう」というハードルが高い印象を持たれることがあります。
ですが、いざやってみると「思ってたより簡単だった」「私にもできた!」と言われることも。それから、どんどんのめり込んでテリーヌの魅力にはまってしまう方が多いですね。
――合計27のレシピを学ぶと伺いましたが、かなりの数のレシピを学べるんですね。
カンナさん:1回のレッスンでデザートテリーヌも含めて3~4種、8回のレッスンで27種類のテリーヌを学ぶプログラムを、1つの期として運営しています。
当初は1期のレシピを2期以降も続けていく予定でしたが、1期生の皆さんから「まだまだ学びたい」「もっと素敵なテリーヌを教えてほしい」とリクエストをいただいたんです。
そこで新たなレシピを考え、第2期、第3期、第4期と続けて講座を開催しました。この1〜4期の合計で108種類のレシピを学ぶことができます。
「108レシピをコンプリートする」と目標を持って学んでくださっている方も多いので、ありがたいことに、皆さん4期通して受講いただく方が多いんです。
このような生徒さんからの後押しがあったからこそ、ここまで続けてこられたと思っています。
また、やる気さえあれば必ず作れるよう、レシピはかなり細かく書いています。講座の動画もできるだけ編集を入れずに、実際に対面レッスンにご参加いただいているかのようにして作っています。
――おでんやスイカなど、意外な食材のテリーヌも作られているそうですが、どのようにアイデアが生まれるのでしょうか?
カンナさん:食材同士の組み合わせは無限にあるので、どんなものでもテリーヌになれるんです。その自由度の高さが、まるでアートのような美しさや、「こんなテリーヌは見たことがない」といった新しい驚きにつながっていると思います。
前菜として提供されるスイカのテリーヌ
実際に、生徒さんへ「他にどんなテリーヌを作ってみたいですか?」とお聞きした時に、なんと「おでんをテリーヌに」とリクエストをいただいて。
一見すると意外な組み合わせですが、実際にテリーヌにしてみると、ナルトの渦巻き模様や二層になったはんぺんが断面にきれいに現れて、予想以上にかわいい仕上がりに生徒さんも大喜びでした!
それから私自身もテリーヌづくりがより一層楽しくなって、どんどんレシピが生まれていきました。
他にもスイカのテリーヌなど、食材によってまったく異なる表情が生まれるので、テリーヌの可能性は本当に無限だなと感じています。
趣味から講師へ。新たな活躍の場を創出
――テリーヌスペシャリスト講座は、どのような方が受講していますか?カンナさん:趣味として料理を楽しまれる方が多く受講されていますね。
普段の料理に飽き飽きしていたり、今までなかった料理の新しいトキメキを求めていたりする方が多い印象です。
あとは、ご自身でパン教室や紅茶教室、薬膳教室など、何かしらの先生をすでにされている方、またこれから始めたいと考えている方もいらっしゃいます。
少数ですがカフェを開業したいという方や、実際に和食の料理人として働いていらっしゃる方もいるので、生徒さんの層は幅広いですね。
――資格取得後は、どのように活動されているのでしょうか?
カンナさん:一番多いのは、パンや紅茶、薬膳など、すでに何らかの教室や講座を開いている先生方が、ご自身のレッスンにテリーヌを取り入れるケースです。
パンとテリーヌは相性が良いですし、紅茶教室であればデザートのテリーヌをご提供したり、薬膳の先生であれば薬膳の考え方を取り入れたオリジナルのテリーヌを考案されたりと、それぞれの専門分野と組み合わせてご活用されています。

ディプロマ取得後は、趣味や仕事に活かしている生徒さんも多い
一方で、とても印象的だったのが、テリーヌ教室の第1期生の方です。その方はもともと教室運営の経験もなく、「先生になりたい」と考えていたわけでもありませんでした。
ところが、テリーヌ作りを続けるうちに周囲から教えてほしいという声が集まり、気がつけばご自身もテリーヌの先生としてご活躍されるようになったんです。
ご本人は「テリーヌのおかげで人生が変わった」とおっしゃっていました。
生徒さんにはご年齢が上の方も多いのですが、テリーヌを通じて新たな活躍の場や、次のライフステージの楽しみを見つけている方が多いことを嬉しく思います。
完成したテリーヌを囲み、笑顔があふれるレッスンのひとコマ。
――印象に残っている生徒さんのエピソードがあれば教えてください。
カンナさん:今まで出会った生徒さんおひとりおひとりが、私にとってかけがえのない大切な存在です。
その中で特に印象に残っているのは、おもてなしの世界で第一人者として知られる、私にとっては雲の上のような存在だった先生が、今私の講座に参加してくださっていることです。
その先生は「日本一予約が取れない料理教室」と言われるほど人気の教室を長年主宰されていて、私自身も以前、先生のトークショーを聞きに行ったことがあるほど憧れの存在でした。
そんな先生が今、私のテリーヌ講座を高く評価してくださっているんです。それは料理研究家の私にとって、「これまで続けてきたことは間違っていなかったんだ」と実感できる、本当に大きな出来事でした。
――それはすごいですね!どういったきっかけで講座を知られたのでしょうか?
カンナさん:きっかけは、私の講座の生徒さんかつ、その先生の生徒さんでもある方でした。私の講座についてインスタグラムで紹介してくださり、それをご覧になった先生が私を知ってくださったそうです。
現在は、おもてなし料理協会10周年記念イベントで、一緒にトークショーを行う企画も進んでいます。

おもてなし料理協会10周年記念イベントでは、憧れの先生との対談の予定も
かつては遠くから憧れるだけだった存在の方と、同じ舞台で「おもてなし」について語り合える機会をいただけるなんて、本当に夢のような出来事です。
次世代へつなぐ、おもてなしの文化
――今後、料理や食に関わる市場において、協会が果たすべき役割をどのように考えていますか?カンナさん:今は、AIやロボットの発展によって、多くの仕事のあり方が大きく変化していく時代です。そんな中で、何十年先も私にできることは何だろうと考えた時、おもてなし料理や、おもてなしの心を次の世代へつないでいくことなのではないかと思っています。

テリーヌを通して、次世代におもてなしの心をつないでいく
料理を作ること自体は、これから先、ロボットが担う場面も増えていくかもしれません。でも、おもてなしの心は人と人との間に生まれるものであり、人間にしか伝えられないものだと考えています。
だからこそ、その心をしっかりと受け継いでいかなければ、料理は単にお腹を満たすためのものになってしまう。
現在の生徒さんは50代、60代の方が中心ですが、その先のお子さんやお孫さんの世代にまで、おもてなしの文化や心をつないでいけたらうれしいですね。
――これからテリーヌ講座を学びたいと考えている方へ、一言メッセージをお願いします。
「本当に私にできるかしら……。」という不安が先に来るかもしれませんが、その点はどうぞご安心ください。
きっと皆さん、テリーヌの魅力に絶対にはまっちゃいますよ。
テリーヌスペシャリスト、次はあなたの番です。
――カンナさん、素敵なお話をありがとうございました!
ひと切れのテリーヌで日常に彩りを
テリーヌは、食材の組み合わせを考える創造性、完成した時の達成感、そして誰かに感動してもらえる喜びなど、おもてなし料理の魅力がぎゅっと詰まっています。
趣味として楽しむのはもちろん、学びを深めて講師として活躍する道も。日々の食卓をもっと豊かにしたい方、新しいことに挑戦したい方は、ぜひテリーヌの世界をのぞいてみてくださいね。
協会・スクールを運営している方へ

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