一般社団法人日本健康食育協会の代表理事・柏原ゆきよさんは、健康でいるためには無理な食事制限をするのではなく、「ご飯と味噌汁」をはじめとしたシンプルな食事を続けることが大切だと言います
さまざまな健康情報があふれる今、私たちは食とどう向き合えば良いのでしょうか。今回は柏原さんに協会を設立した背景や、協会が提唱する「健康食育®」の考え方を中心にお話を伺いました。

一般社団法人日本健康食育協会代表理事・柏原ゆきよさん
ごく普通の食事こそが、健康の土台になる
── 一般社団法人日本健康食育協会を立ち上げたきっかけを教えてください。柏原さん:人々が健康に過ごすための基本は、「ご飯と味噌汁」のようなごく普通の食事であることを、より多くの方に伝えたいと思ったのが協会を立ち上げたきっかけです。
大学で管理栄養士の資格を取得した私は、「食を通じて人の健康を支えたい」という思いで社会に出ました。
そうした思いを持って働くなかで印象に残っているのが、フィットネスクラブで栄養士として働いていた頃の経験です。
その時に感じたのは、会員様の多くが運動には一生懸命取り組んでいる一方、日々の食事が十分に整っていない方が少なくないということでした。
インストラクターも、運動の知識は豊富なものの、食に関する知識を十分に持っている方は限られていて。お客様へのアドバイスも食事を見直すというより、食事代わりにサプリメントを勧めるような状態だったのです。
もちろん、サプリメントそのものを否定しているわけではありません。むしろ、サプリメントが人の健康にどれほど良い影響をもたらすのかを知りたいと、サプリメントメーカーに所属したこともあります。
そこでは商品の開発にも携わりましたが、追求すればするほど、やはり健康の原点は「食事」にあると感じるようになったのです。
その感覚をより確かなものにしたのが、これまでのキャリアを通じて多くの方の食事と健康状態を継続的に見てきた経験です。
延べ10万人以上の食事を分析し、一人ひとりの食事内容と健康診断の数値を追いかけていくなかで、健康を維持・改善できている方々に共通する点が見えてきました。
それは、ご飯と味噌汁を中心に、日々の食事をしっかりと食べていること。
つまり、日本型の食生活をきちんと実践している方ほど良い結果につながっていたのです。
── 日本型の食生活を重視する考え方は、協会が提唱する「健康食育®」理論にもつながっているのでしょうか。

一般社団法人日本健康食育協会の理念
柏原さん:そうですね。どれだけ運動を頑張ったり、サプリメントを取り入れたりしていても、日々の食事が整っていなければかえって体に負担がかかってしまうこともあるのです。
子どもから高齢の方まで、年齢を問わず共通する考え方として提唱しています。
また、健康食育®は、一般的な栄養学とは少し考え方が異なります。
栄養学の観点では、「血圧が気になる場合はこの栄養素を意識する」といったように、症状や数値に応じて食材や栄養素を考えることがあります。
ただ本来、体はすべてつながっているものです。特定の症状だけを切り取って栄養素を補おうとしても、根本的な健康につながるとは限りません。
症状に合わせて食事を足し引きするのではなく、食事全体のあり方を考えていくことが、健康食育®の特徴の一つです。
── 世の中では糖質制限やファスティングなど、何かを抜いたり我慢したりする食事法も広まっています。そうした傾向をどのようにとらえていますか。
柏原さん:より健康になりたい、キレイになりたいという願望から糖質制限や、食べること自体を控える方は少なくありません。メディアやSNSでも、そうした健康法がよく取り上げられていますよね。
しかし、そういった方法を長く続けるのは難しいものです。実際に、リバウンドしてしまったり、体調を崩してしまったりして健康から遠ざかっていく方も多く見てきました。
健康を損なえば、生活の質が下がり、医療費の負担が増えます。やりたいことに取り組む気力もわかなくなってしまうでしょう。そんな日々を過ごしても、楽しくないですよね。
だからこそ、私たちは「何かを抜く」「我慢する」ことよりも、きちんと食べ、きちんと出す…つまり、きちんと代謝できる体を作ることが大切だと考えています。
どうすれば健康でいられるのかを知ることは、その後の人生を豊かに歩むための大きな財産になります。一人でも多くの方に健康と食事の基本を知っていただきたいという思いで日々活動しています。
健康食育®の考え方をインプット・アウトプットの両輪で学ぶ
── 改めて、協会の活動概要や開催している講座について教えてください。柏原さん:2011年に、一般社団法人日本健康食育協会を設立しました。

協会では、先ほど話した健康食育®の理論を実践的に学べる講座を開催しています。現在開講しているのは、「健康食育®ジュニアマスター講座」と「健康食育®シニアマスター講座」です。
累計受講者数は、ジュニアマスター講座が5,000名以上、シニアマスター講座が約1,000名です。
講座に加えて、お米と健康の関係性についてYouTubeで情報発信をしたり、お米をテーマにした講演会やフォーラムに登壇したりと、健康食育®の考え方を広く伝える活動も行っています。

YouTubeチャンネルでもお米に関する情報を積極的に発信
── ジュニアマスター講座の概要について教えてください。
柏原さん:ジュニアマスター講座では、健康食育®の考え方の基礎となる「健康理論」と「食事理論」について指導しています。
健康理論は、日本人が健康を実現するために必要なことを食・体・メンタル・運動などの観点から理解するための理論です。特定の栄養素や健康法に偏らず、健康に関する情報を広い視野でとらえる力を養います。
食事理論は、日本型の食生活を基本にしつつ、食べものを判断する視点を広く持つ「食選力」の向上を目的とした理論です。「情報が多すぎて、結局食べる時に何を選べば良いのかわからない」といった悩みの解消につながります。
栄養学の専門知識がない方でも理解しやすいよう構成しているので、食や健康について初めて学ぶ方でも安心して受講していただけます。
また、ジュニアマスター講座はすべて動画で受講可能です。お好きな時間に、ご自身のペースで学習を進められます。
── シニアマスター講座は、ジュニアマスター講座と比べてどのような違いがありますか?

柏原さん:シニアマスター講座では、ジュニアマスター講座で身につけた知識を周囲に伝える力を磨いていきます。いわゆるアウトプットに重きを置いている点が特徴です。ジュニアマスター講座を受講し、課題を修了した方が次のステップとして受講できます。
講座はZoomを用いたオンライン形式で行っており、受講生同士で学び合いながら、実践的な伝え方を身につけていきます。
受講されるのは、これまで学んだ知識を身近な家族や友達に伝えたいという思いを持つ方や、ご自身の健康についてさらに理解を深めたい方が多いです。
また、食や健康に関わる仕事をされている方が、自身の専門性を高めたり、サービスに付加価値を加えたりする目的で受講されるケースもあります。
実際に、エステサロンのオーナーやフィットネスインストラクター、医師、看護師など、専門分野を持つ方にも受講いただいています。
── シニアマスター講座では、「伝える力」を磨くためにロールプレイングも行われているそうですね。
柏原さん:そうなんです。これまで学んだ内容を相手にわかりやすく伝える実践をしていただくために、オンラインでロールプレイングの場を設けています。
多くの資格講座では、学びがインプットだけで終わってしまいがちです。しかし私は、せっかく身につけた知識を自分の中だけにとどめておくのはもったいないことだと思っています。
ぜひ、家族や友人など身近な方に伝えることから始め、ゆくゆくはより多くの人の健康に貢献できる人になっていただきたい。講座を受講いただくことでそういった方が増え、周囲に良い影響が広がっていけば、社会全体もより良い方向へ変わっていくのではないかと思っています。
知識の押しつけではなく、相手に寄り添う伝え方が身に付く
── 講座を通じて、受講生の方にはどのような変化が見られますか?柏原さん:シニアマスター講座の受講生を例にすると、知識だけでなく、それを人に伝えるためのコミュニケーション力が磨かれたという方が多くいらっしゃいます。
みなさんここで学ぶとお米が大好きになって、「ご飯を食べることは大切なんだ」と実感してくださいます。その考えが伝わること自体は、とてもありがたいです。
一方で、お米に対する思いが強くなるあまり、たとえば糖質制限をしている方に対しても「ご飯を食べた方が良いよ」「糖質制限は良くないよ」と伝えたくなってしまう方も少なくないようなのです。
食に対する価値観は人それぞれ。相手の考え方を否定するような伝え方をしてしまうと、かえってコミュニケーションのトラブルにつながることもあります。
だからこそ講座では、まず相手の価値観や背景を受け止めたうえで、その人にとって必要な提案をしていく伝え方を大切にしています。そうした学びを通じて、受講生の方も「自分の考えを押しつける」のではなく、相手に寄り添いながら伝えられるようになっていきます。
── 一方的に伝えるのではなく、相手の価値観を否定しないという姿勢を大切にしているのですね。
柏原さん:何かを一方的に否定しないという姿勢は、健康食育®の根底にある考え方でもあります。食においても、特定の食べものを「悪いもの」と決めつけたり、排除したりはしません。
日本型食生活の良さを伝える時も同じです。ご飯と味噌汁を中心にした食事は大事であるものの、決してそれ以外を食べてはいけないと言っているわけではないのです。
日本の食事の考え方には、「ハレ」と「ケ」があります。日常である「ケ」の食事は、ご飯を中心に整えていく。一方「ハレ」の食事では、好きなものやバリエーションに富んだ食事を楽しんで良い。
大切なのは、どちらか一方に偏るのではなく、メリハリをつけながらバランスを取っていくことです。そうした食事のあり方が、体の調子や日々のパフォーマンスの向上にもつながると考えています。
学んで終わりにしない。資格を活かすための仕組み

シニアマスター講座修了後も学び・つながり合えるコミュニティ「食育の答」研究会
── 受講後のフォロー体制はありますか?
柏原さん:シニアマスター講座を修了した方は、Facebookコミュニティ「食育の答」研究会にご加入いただけます。現在は、シニアマスター資格取得者の8割以上が参加しています。
このコミュニティでは、健康・食育に関する最新情報を共有したり、食に関する悩みを相談したりできます。資格取得後も継続的に学びを深めながら、卒業生同士が交流できる場として好評です。
また、シニアマスター講座の修了者のなかで希望される方には、ビジネス面のサポートも行っています。食や健康に関する事業を立ち上げたい方や、すでに行っている活動をさらに発展させたい方を支援しています。
知識やスキルを身につけても、それをビジネスとしてどう形にしていくかを知らなければ、成果につなげていくのは難しいものです。そのため、集客の方法や収益構造の考え方などを追加で学べるカリキュラムも用意しています。
── 受講後のサポートが手厚いですね。実際に、資格を活かして活躍されている方の事例があれば教えてください。
柏原さん:都内でエステサロンを開業されている、女性のシニアマスターさんについてお話ししますね。
その方は約10年前にシニアマスター講座を受講し、資格を取得されました。その後、エステの施術に加えて食事の面からもお客様の健康や美容をサポートしたいと考え、指導をするようになったのです。
すると、お客様から「肌の調子が良くなった」「ダイエットにつながった」といった喜びの声が増え、紹介や口コミで予約が埋まるように。周囲に競合店も多いなか、広告に頼らずとも高いリピート率を維持できていると伺っています。
また、コロナ禍でエステの施術が難しくなった時期は、オンラインでの食事指導を行っていたそうです。それをきっかけに全国のお客様とつながれるようになり、活動の幅が大きく広がったとおっしゃっていました。
楽しく学び、仲間と広げる健康食育®の未来

── 協会の今後の展望を教えてください。
柏原さん:協会で大切にしている健康食育®の考え方を、より多くの方に知っていただきたいです。私一人ではなく、受講生や卒業生の皆さんと協力しながら活動を広げていきたいと考えています。
当協会の講座は、資格を取得して終わりではありません。学びを活かして世の中をより良くしていく仲間になっていただくことが、本当のスタートだと考えています。皆さんと一緒に活動しながら、健康な人を一人でも多く増やしていけたらと思っています。
健康食育®の考え方を伝えていくうえでは、協会に携わる私たちが健康で、元気でいることも大切です。受講生や卒業生の皆さんが楽しそうに、いきいきと活動している姿そのものが健康食育®の説得力になるからです。
「日本健康食育協会の人たちは、みんな元気で楽しそうだよね」と思っていただけるような雰囲気をつくれたら理想ですね。
── 最後に、受講を検討している方にメッセージをお願いします。

受講生さんたちの交流の様子
柏原さん:食と健康について、とにかく楽しく学びたいという方にぜひ来ていただきたいです。
協会では「楽しく学ぶ」ことをモットーにしているんです。無理に頑張るよりも、楽しい気持ちで取り組む方が続けやすいですから。
楽しんでいる様子が伝われば、それを見た周りの人たちも興味を持ってくれるはず。そんな風に、少しずつ輪が広がっていけばと思います。
新しいチャレンジには不安もあるかもしれませんが、協会にはわからないことを優しくサポートしてくれる先輩方がたくさんいるので安心してください。
日頃から受講生・卒業生と接していて感じるのは、本当に温かい方が多いということです。それは一人で頑張るよりも、みんなで学び合う方が楽しいという雰囲気が、協会全体に根づいているからだと感じています。
同じ理念に向かう仲間と一緒に、楽しく学び続ける。それ自体が、健康を実現するうえでの大切な要素になります。少しでも興味があれば、ぜひ一歩踏み出してみてください。