そんな思いを持つ方におすすめしたいのが、一般社団法人自然セラピスト協会の「アロマコンシェルジュ認定講座」です。
「香り」はわずか0.2秒で脳に届くとされており、心と体に深く作用する植物療法のひとつとして活用されています。
同協会では、解剖学の基礎知識から五感を使った実践まで、知識と体感を丁寧に結びつけるカリキュラムで、初心者から講師を目指す方まで無理なく学べる環境を整えています。
今回は、同協会の代表理事長を務める大塚ひさこさんに、設立の背景から講座のこだわり、モリンガ植樹や過疎地域での活動まで詳しく伺いました。
自分や家族のセルフケアに活かしたい方、アロマの知識を仕事に取り入れたいという方に向けて、植物の力が暮らしを変えるヒントをお届けします。
アロマを「活かせる人」を増やしたい

一般社団法人自然セラピスト協会 代表理事長の大塚ひさこさん
――協会設立のきっかけを教えてください。
大塚さん:30年以上、自然療法の広報などを仕事としてきました。その中でずっと感じていたのが、アロマを習ったのに、使いこなせていない人がとても多いということです。
「資格は持っているけど忘れてしまった」「どうやって作るんだっけ」という方をたくさん見てきました。自然のものなので、たくさん使えばいいわけでもないですし、知識なしに人に提案するのも違います。
それなら、もう一度初心に返って「私がこんな風に学んだらわかりやすかった」という視点で作り直そうと、アロマコンシェルジュ講座を立ち上げました。現在までに延べ1,000人以上の方に受講いただき、コンシェルジュの認定を受けた方も50名を超えています。
その土台になったのが、学校での経験です。高田馬場にある日本福祉教育専門学校で、保育士を目指す学生たちに選択授業として5〜6年教えていたんですね。その中で、「基本のキがいかに大切か」を強く実感しました。
――学校での活動は、今も続いているのでしょうか?
大塚さん:はい。文部科学省の「カイゴのミライ」プログラムに3年間携わり、北海道から沖縄まで10校以上の介護福祉専門学校を訪問しました。

教育の一環として学校でも教えている
アロマコンシェルジュの講座を受講した先生たちが、アシスタントティーチャーとして活動し始めており、学校における植物療法の教育の活用が進んでいる感覚があります。
フランスでは、香りを活用したケアが医療現場で取り入れられているケースもあります。日本はやっとスタートラインに立ったところ。これからだと思っています。
講義は五感で体感するスタイル
――アロマコンシェルジュ認定講座の特徴を教えてください。大塚さん:一番大切にしているのは、「体感」です。動画やZoomでの学習が増えていますが、香りというのは画面を通しては伝えられません。
においを嗅いで、実際に肌に触れて、体がどう反応するかを感じてもらう。五感をフルに使うことが、この講座の根幹にあります。
それから、解剖学の基礎知識も取り入れています。「なんとなくいい香り」で終わらせず、なぜ身体に作用するのかをきちんと理解してほしいんですね。
たとえば香りは、鼻から入ってわずか0.2秒で脳に届く仕組みになっています。自分たちの身体がどんな構造になっているかを知った上で、香りと向き合うと、まったく見え方が変わってくるんです。
――カリキュラムが基本編と応用編に分かれているのはなぜですか?
大塚さん:まず土台となる知識がないと、ブレンドも処方もできないと思っています。基本編では解剖学の基礎から学び、香りが身体にどう働くかをしっかり学んだ上で、実際に自分でプロダクトを作るところまで実践します。
応用編では、ブレンドの計算式など少し難しい内容も入ってきます。ただ、最初から計算式を出してもきっと頭に入らない。基本編でじっくり体感した後だからこそ、「あれがここにつながるんだ」と腑に落ちる。その順番にこだわっています。

解剖学などの基本のキもしっかり学ぶ
さらに、応用編の後半にはセルフハンドケアの講義も入っています。人にしてあげる前に、まず自分の手を自分で触ってみる。セルフケアが自分でできてはじめて、誰かに提案できる立場になれると思っているので。
アロマコンシェルジュになった後「自分がどう使うか」をイメージしながら学べるよう、カウンセリングカルテの書き方も一緒に学んでいきます。
――「処方を押しつけない」こだわりもあったんですよね?
大塚さん:「この精油を混ぜてください」といった指示はしないようにしています。その日の自分の状態に合わせて、自分で好きな香りを選んで作ってもらう。だから同じ講座を受けても、一人ひとりの出来上がりが違うんですね。
その「今日選んだ香り」が、自分の今の状態を映し出しているので、来月また同じ講座を受けたら、違う香りを選ぶことも。これが自分の心や身体との対話につながります。

実践しながら学べるのが講座の魅力
また、「1回で全部覚えなくていい」とお伝えしています。好きな香りはきっと自分でわかるから、まずそこから入ればいいんですよと。
好きな香りの方が記憶に残りやすいですし、その香りを選んだ理由を一緒に掘り下げることで、私もその方の状態をサポートできるからです。
香りが人の傍らに寄り添う瞬間
――受講された方に、どのような変化がありましたか?大塚さん:たくさんの変化の話を伺っていますが、ピラティスの先生が受講してくださった時のことが印象に残っています。ピラティスは姿勢だけでなく呼吸が大切ですが、その先生の受講生さんに呼吸がとても浅い方がいたそうなんですね。
講座で学んだ後、試しにラベンダーを使ってみたら、レッスン後にその方の表情が明るくなったそうです。
香りによってリラックスし、呼吸が整いやすくなった可能性があると感じたと伺いました。
あとは、71歳の方が受講してくださったこともあります。ホルモンバランスのお薬を飲まれていて、アロマとの出会いも何か感じるものがあったんでしょうね。

たくさんの人の心と身体のケアができるアロマ
その方は花粉の季節に合わせてクリームを自作されて、職場のご友人にプレゼントしたところ、とても喜ばれたそうです。
「自分で作ったものを、説明しながら人に届けられる」という喜びがすごく伝わってきました。
――そういった言葉をもらうと励みになりますね。
大塚さん:そうですね。ほかにも、植物を育てるのがすごく好きな方がいて、その方のお母様が高齢でホスピスに入られた時に、スプレーとオイルで香りのケアを続けたそうです。
すると「もうダメかもしれない」と言われていたお母様が、予想より長く元気でいられたみたいで。そしてお母様が旅立たれた時、担当の看護師さんから「すごくいい香りに包まれていましたよ」と伝えてもらったと。その話を聞いた時は本当に胸が熱くなりました。
――香りが持つ力に驚きを隠せません。
大塚さん:私自身、昨年母を亡くしたんですが、脳幹梗塞で7年間寝たきりでした。医療的なことは私にはできないけれど、オイルやスプレーは作れます。
家族が面会に来る時には「これを使ってね」と、ラベンダーとティートリーという精油を常に置いておいて、身体のケアをずっと続けていたんですね。

アロマの作用を学ぶからこそ、理解を深められる
気がつけば、アロマを使ったケアを7年間続けていました。
香りのケアも、日々のサポートの一つとして役立っていたのではないかと感じています。
認知症でなかなか言葉が出てこない方が、バラの香りをきっかけに「バラ」と口にしたり、昔の出来事を思い出したりする場面に立ち会ったこともあります。
香りは脳に素早く伝わるとされており、その仕組みについて研究も進められています。
だからこそ、その効能をちゃんと知って使える人が、もっと増えてほしいなと思いますね。
奇跡の木「モリンガ」を暮らしの備えに
――講座でモリンガ植樹やSDGsの活動が組み込まれているのはなぜですか?大塚さん:モリンガは、5,000年前からアーユルヴェーダで使われてきた植物で、「奇跡の木」と呼ばれています。WHOでも注目されており、栄養価も非常に高いです。
現代社会は地震などの災害があり、コロナのような感染症も起きて、何が起きるかわからない時代ですよね。
でも、植物の知識があれば食することもできるし、周りの人を助けることもできます。エッセンシャルオイルがなくても、植物そのものの力を知っていれば、暮らしの中で活かせることがたくさんある。いざという時に自分を守ることができるのが、「モリンガ」だと考えています。
――茅ヶ崎の畑での栽培も続けていらっしゃるとか?
大塚さん:モリンガは亜熱帯の植物なので、日本では自生が難しいと言われています。でも「本当にダメなのか」とまず試してみたくて、茅ヶ崎の畑でトライしました。冬は越せないので一毛作になりますが、ちゃんと育つんですね。今は沖縄や九州の一部で、自生し始めているところもあります。
毎年植樹祭を開催していますが、遠方からもきてくださる方もいて、毎回40〜50人が集まってくれるんですよ。参加された方には種と育て方をお伝えして持ち帰ってもらうので、「うちのモリンガがこうだった」「2年目も芽吹いた」という話題でつながれます。モリンガを通じて、人と人の輪が自然に広がっていくんです。
――素敵なご活動ですね。
大塚さん:先日は山口県の周防大島という島にも植樹に行ってきました。かつて6万人いた人口が、今は約1万3千人にまで減っている島ですが、地域の高齢者の方々が庭でハーブを育てて、豊かに暮らしていらっしゃるんです。その姿にすごく感動して、ここでやろうと決めたんです。
もともと私はアパレル業界出身で、早くからエコバッグを使ったりマグカップを持ち歩いたりしてきました。「地球に暮らす1人」という意識は、ずっと自分の中にあるんです。
便利なことは素晴らしいけれど、過剰になりすぎている今に対するクエスチョンマークが、この活動の根っこにあると思います。
過疎地の畑を元気にしていく
――今後、協会としてどのような活動を広げていきたいとお考えですか?大塚さん:まず一番やりたいのは、アロマコンシェルジュの先生たちが、私以外のところでも活躍できる場をつくることです。先生たちが、またそれぞれの場所で誰かに伝えていく循環を生み出していけたらと考えています。
それと並行して、過疎地域の畑の復興にも取り組んでいきたいですね。周防大島でも、茅ヶ崎でも、「大変だよね」「東京から来てもできないよ」と最初は言われるんですよ。でも形になると、人が集まってくるんです。
田植えも1人では絶対にできません。でも、同じ思いを持った人たちが集まれば、あっという間にできてしまう。いざとなった時に集まれるチームがあれば、過疎地域の課題も少しずつ変えていけると信じています。

みんなでプロダクトを作り上げていく
また、周防大島で暮らす高齢者の方々は昔の知識や実践方法など、私たちが学ぶべきスキルをお持ちです。
自然に溢れたこの島で一緒に活動出来たらまた次世代に繋ぐことが出来たなら嬉しいです。
――最後に、これからアロマや植物療法を学びたいと思っている方へメッセージをお願いします。
大塚さん:SDGsやエシカルという言葉は、だいぶ知られるようになりましたが、言葉として知っているのと、体感するのとでは、まったく別のことだと思っています。
私は活動の中でいつも「健康と笑顔が溢れ広がりますように」と願っています。誰かを助けたいと思っていても、まず自分が健康でなければできません。セルフケアができてはじめて、周りにも届けられる。アロマコンシェルジュの講座も、その考え方が根にあります。
好きな香りは、きっと誰にでもあるはずなので、その「好き」から入ってもらえれば、あとは自然についてきます。一緒に学びながら、自分の身体や暮らしと向き合う時間をぜひ持ってみてください。
――大塚さん、素敵なお話をありがとうございました!
香りで暮らしを豊かに
アロマセラピーは、香りを楽しむだけのものではありません。植物が持つ力を知り、自分の心と身体と向き合いながら、大切な人のそばに寄り添える時間を作ってくれます。趣味としてセルフケアに活かすことはもちろん、アロマコンシェルジュの認定を経て、講地域で活躍する道もあります。気になる方はぜひ、アロマの魅力に触れてみてください。
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