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花が人と人をつなぐ。フラワーデコレーター協会が35年以上貫く「技術の先にある想い」とは

花が人と人をつなぐ。フラワーデコレーター協会が35年以上貫く「技術の先にある想い」とは
  • 今回お話を伺った方
    • フラワーデコレーター協会 事務局長

      中井 健氏

      フラワースクール勤務時代に抱いた「技術偏重の学び」への違和感をきっかけに、家庭に飾れる実践的なお花の価値を重視した教育に共感し、協会運営に携わる。色彩理論を取り入れた独自カリキュラムの普及や、指導者育成・社会貢献活動を通じて、「各家庭に花のある社会づくり」を推進している。

35年前、多くのフラワースクールでは、資格取得のレッスンで作った作品が大きいために花をぬいて持ち帰る光景がよく見られました。作品が大きく、完成後にそのまま持ち帰ることが難しかったためです。

こうした状況の中で、「それが本当にお花の学びなのだろうか」「家庭に飾れる作品こそが本来の学びではないか」という視点が生まれ、その問題意識から設立されたのが、フラワーデコレーター協会です。

1990年に設立されたフラワーデコレーター協会は、全国に約1万3000名の会員を擁し、そのうち約1500名が講師として活動しています。


「技術を身につけるだけではなく、お花には家族を笑顔にし、人のつながりを生む力があるんです」と語る、同協会・事務局長の中井 健(なかい たけし)さんに、協会設立の背景から独自のカリキュラムまで、詳しくお話を伺いました。
 フラワーデコレーター協会 公式サイトへ 

「家庭に飾れるお花」という原点

フラワーデコレーター協会 事務局長の中井 健(なかい たけし)さん

フラワーデコレーター協会 事務局長の中井 健(なかい たけし)さん


——協会設立の背景について教えてください。

中井さん:協会を立ち上げる前に、フラワースクールで仕事をしていた時期がありました。

当時は「資格の時代」で、どんな職業においても、資格を取って将来に活かしていこうという風潮でした。私どものスクールでも、当時、唯一公的なフラワーデザインの資格を取得するコースを設けていました。

ところが、そのレッスンを見ていて、ずっと違和感を感じていたんです。

試験のための作品というのは、大きくて、お花もたくさん使いますが、レッスン後には花をすべて抜いて持ち帰るのが一般的でした。

技術を身につけるためだけに来て、お花はただの「試験を受けるための材料」になっていたという印象でした。

——その違和感から、どのような考えに至ったのでしょうか?

中井さん:お花というのは、本来はとても気持ちが和むものです。ただお店で買って花瓶にポンと入れておくだけでもいいのですが、家庭に飾れる大きさで、知識や技術を学び作品を作ることが大切だと考えました。

日常に飾れるサイズの作品づくりを通して、実践的な技術を身につけている様子

日常に飾れるサイズの作品づくりを通して、実践的な技術を身につける


作品を家庭に持ち帰り、玄関やキッチン、ダイニングテーブルに飾ることで、空間が彩られるだけでなく、作り手自身の満足感や家族とのコミュニケーションも生まれます。

人間のつながりが生まれることこそが、お花を学ぶ本来の姿なんじゃないかと思いました。その思いが、協会設立の発端です。

家に飾れるくらいの花束を作っている画像

「フラワーカラー」——色彩のプロが監修する独自メソッド

——お花関連の他団体との最大の違いは何でしょうか。

中井さん:「フラワーカラー」という、花の色の組み合わせをTPOに合わせてコーディネートする知識を指導している点です。フラワーカラーはおそらく当協会だけの特徴だと思います。

協会の理事長であるヨシタミチコ先生は、色彩計画を手がける色彩業界の第一人者です。その専門性をお花の作品に活かせるように、独自のカリキュラムを作っていただきました。

例えば、贈る相手のイメージに合わせた花束の提案が可能です。また、花嫁のパーソナルカラーをもとに、ドレス・ブーケ・会場装花まで一貫したコーディネートを提案できます。

カラーの座学を教えている風景画像

カラーの知識を深めることで、作品がセンスアップします。


——お花の形だけでなく、色のことまでしっかり学べるのですね。

中井さん:同じ形の作品でも、花の色の組み合わせによって、仕上がりの印象は大きく変わります。

皆さんにはTPOに合わせた色合いの作品を作れる技術者になってほしいということで、当協会のすべてのライセンス講座には、花の色についての学びが含まれています。

ホワイトボード前の女性

基礎から体系的に学べるカリキュラムを用意している

技術の先に生まれる、人の心の和と優しさ

——協会として現場で大切にされていることは何でしょうか。

中井さん:私どもの理念は「各家庭に花のある社会づくり」です。

家にお花が一つ飾ってあるだけで、家族の関わり合いが変わってきます。玄関やダイニングテーブルに花が飾られるような暮らしが日本全国に広がっていくことを目指し、活動を続けています。

そのためには、まず全国に当協会の思いを持った先生がいなければなりません。そして、その先生方に「お花というのは、作品そのものから人の心の和や優しさが生まれてくる」という想いを大切に伝えていってほしいです。

小さな花束の作り方を学んでいる画像

——技術だけでなく、想いを継承していくということですね。

中井さん:想いを継承していくことが協会の根っこなんです。

入り口では型を覚えに来る方も多いのですが、学ぶ中で「技術だけではなく、想いの部分が大事なんだ」という価値観を、先生方が生徒へと伝えていきます。それが全国に広がっていくことを、大切にしています。

先生と生徒さんの間には、卒業という形ではなく、ずっと関係性が続いていきます。

独り立ちした後も「今こうなんだけど、先生どうしたらいいでしょう」と気軽に相談できる信頼関係を持っている教室が多いんです。

つながりを大切にしているからこそ、自然とそういう関係が生まれるのだと思います。

コミュニティとしての広がりも生まれている

花を通じて広がる社会貢献の輪

——「SFAプログラム」や「あれこれプロジェクト」など、ユニークな取り組みがありますね。

中井さん:SFAプログラムは、「認知機能向上のためのフラワーアレンジメント」という取り組みです。農林水産省所轄の国立研究開発法人「農研機構」さんと協力して行っております。テキストを作成し、全国の福祉施設等で指導できる指導者を育てています。

給水性スポンジに印がついていて、そこに花を挿していけば、どなたでもある程度の作品ができあがるんです。まず先生が教えながら一緒に作り、次に自分一人で作り方を見ながら復習する。すると、いろいろな脳の機能を使います。

最初はできなくても、1週間おき、2週間おきと続けていくと、だんだん一人で綺麗に作れるようになってくる。これが認知機能の向上や維持につながります。社会貢献の一環として行っているレッスンですね。

女性がおじいさんにフラワーアレンジを教えている画像

社会貢献の一つとして、少しでも認知機能の向上につながる活動に取り組んでいる


——親子向けの取り組みもあるとお聞きしました。

中井さん:小学校が週休2日制になった頃、親子で過ごす時間が増えることに注目しました。

その時間に、お母さんとお子さんがもっと結びつきを深められる方法はないかと考えて、「親子で作るフラワーアレンジメント」という活動を始めました。

社会福祉協議会さんと連携して、親子で一緒に一つの作品を作り、自宅に飾る。作っている間の会話や共同作業が、親子関係を密にしていく。ここでもやはり、人の心の結びつきを大切にしているんです。

クリスマスの飾りを作るイベントの作品の画像

親子で作れる、簡単なアレンジメントのイベントも行っています。


——他にも社会貢献として進めている活動があるそうですね。

中井さん:SDGsに関連した取り組みも行っています。例えば、お花屋さんで花を買ってきて、花瓶に入れて1週間ほど飾り、枯れてきたら捨てるのではなくて、一つのお花を長く楽しむ方法を提案しています。

お花を買ってきたら、まず花瓶に入れて楽しむ。次にそれを花束にしてぶら下げて、ドライフラワーになっていく過程を見ながら楽しむ。ドライフラワーになったら、そのまま何ヶ月か飾って楽しむ。

さらに、そのドライフラワーの花びらをバラバラにして茎を少し細かくし、精油で香りをつけてポプリにする。透明の瓶に入れれば見た目も綺麗ですし、匂い袋にすることもできます。

「大丈夫かな」から「次はこうしたい」へ


——印象に残っている受講生のエピソードはありますか。


中井さん:何も知らないところからスタートして、一つの資格を取ると、その方の表情が全然違ってくるんです。

習い始めたときと資格を取った後とで、まず表情が変わる。そして実際に仕事をして、お金をいただくようになると、今度は自信が湧いてくるんです。表情だけでなく、言葉の端々に自信が表れてきます。

最初は「大丈夫かな」と不安そうだった方が、そんな声は一言も出さなくなる。代わりに「次はもっとこういうふうにしたいと思います」と、未来を語り始めるんです。その変化を感じることが、本当に嬉しいですね。

真剣な表情で、お花のディスプレイを作る卒業生の画像

フラワーデコレーター協会で学んだ知識とお花に対する思いをしっかりと現場で活かせます。


——技術をしっかり身につけて、不安なく現場に出られることも大きいのでしょうか。

中井さん:それもあります。ただ、技術はもちろんですが、やはりお花が人をつないだり、心を優しくしたり、笑顔を生み出したりする。私どもはそのためにやっているのかなと思います。

以前は大手製薬会社と協力して、パーキンソン病患者さんのためのアレンジメントを全国で行っていました。体調が優れない方が花を通して笑顔になり、そこから少しでも健康が維持される。そういう手助けができることも、この仕事の大きな意味だと思っています。

「一生ものの武器」と広がる学びの選択肢

——花を通じて自立したい方にとって、「一生ものの武器」とは何でしょうか。

中井さん:それは「指導者」になることです。先生には定年がありません。自分で教室を切り盛りして、生徒さんとのつながりをずっと続けていけます。

50代後半から始める方もいれば、80代でも現役で教えている先生もいらっしゃいます。

ディスプレイの仕事は年齢とともに難しくなる面もありますが、教室運営であれば、自分のペースで無理なく続けられます。

好きな花を自ら仕入れ、生徒に提供する中で、やりがいや人とのつながりを実感できるのも魅力的なポイントです。

収入はそれほど大きくなくても、人との関わりをずっと持っていられるから、一度先生になったらやめられないという方が多いですね。

——フラワーデコレーター協会で指導者を育成する際のこだわりはありますか?

中井さん:指導者になりたいという方に対しては、しっかりとプログラム化して教えていきます。

民間の指導機関としての協会では、私どもが第1号になります。身につけたものを、次の人に教え、そのつながりを広めていきたいというのが、当協会の一番の想いです。

フラワーデコレーター協会での学びの様子

——指導者を育てる中で、業界全体の課題を感じることはありますか?

中井さん:正直なところ、生徒が集まりにくい状況はあります。

物価の上昇もあり、習い事が後回しになりやすい傾向に加え、花材の価格も上がっています。

また、コロナ以降は結婚式などのイベント需要も変化し、花業界全体として影響を受けてきました。花の流通が減ることで、生産者が作付けを調整する動きも見られ、国産の花の供給にも変化が出ています。

——その課題に対して、フラワーデコレーター協会としてどのような取り組みをされていますか?

中井さん:当協会では、生花だけでなく、アーティフィシャルフラワーやプリザーブドフラワー、フラワーカラーなど、多様なライセンスを用意しています。

アーティフィシャルフラワーの画像

アーティフィシャルフラワー(造花)の知識やテクニックも色彩学と併せて学びます。


いろんな種類の指導ができる教室であれば、生花で入った方が「次は色の勉強をしたい」「アーティフィシャルも学びたい」と、勉強の幅を広げることができる。同じ教室で同じ先生から学べるので、信頼関係も深まり、質問もしやすくなります。

また、知識を多く持っている方が、最終的に何をするにも有利です。生花だけに限定しない幅広い学びを提供できるよう、カリキュラムを整えています。

「勇気を出して始めてよかった」と思える日のために

——これから学びを始めようか迷っている方へ、メッセージをお願いします。

中井さん:お花に限らず、もし心のどこかで「やってみたい」と感じていることがあれば、今が一歩を踏み出すタイミングだと思います。

1年後、2年後に、「あの時勇気を出して始めてよかったな」ときっと思えるはずです。ぜひ挑戦してみてください。
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この記事を書いた人
森田かえ

森田かえ

教育・子育て・暮らしを中心に執筆する取材ライター。 人の想いや背景を丁寧に聞き取り、言葉にすることを大切にしている。 子どもや家族、地域にまつわるテーマを軸に、読み手の暮らしに届く文章を心がけている。 お酒を飲みながら推しの番組を見る時間が、ささやかな幸せ。

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