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今回お話を伺った方
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日本ティーインストラクター会副会長
永津 惠子氏日本紅茶協会が実施するティーインストラクター養成研修の修了者で構成される、日本ティーインストラクター会で副会長を務める。紅茶の基礎知識から歴史、産地や文化までを大切にし、学び続けられる場づくりと会員同士の交流を通じて、日本における紅茶文化の普及と発展に尽力している。
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日本ティーインストラクター会副会長
池田和義氏日本ティーインストラクター会副会長を務め、あわせて日本紅茶協会常務理事として、紅茶業界全体の発展にも携わる。紅茶の知識やおいしい淹れ方を社会に広く伝える人材育成を軸に、資格制度や学びの仕組みづくりを通じて紅茶文化の継承と発信に取り組んでいる。
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日本ティーインストラクター会は、日本紅茶協会が実施する「ティーインストラクター養成研修」を修了し、資格認定を受けた人たちが集う団体です。紅茶の基礎知識から歴史、産地ごとの特徴、いれ方の技術などさらに学びを深め、日本における紅茶文化の普及と発展を目指して活動しています。
今回は、日本ティーインストラクター会副会長であり日本紅茶協会常務理事でもある池田和義さん、そして同会副会長の永津惠子さんに、会設立の背景やティーインストラクターの活動内容、資格の可能性まで、じっくりお話を伺いました。
日本ティーインストラクター会のはじまりと歩み

――日本ティーインストラクター会はどのように誕生したのでしょうか?
日本ティーインストラクター会は、1989年(平成元年)7月18日に設立されました。もともと日本紅茶協会で実施していた「ティーインストラクター養成研修」を修了した方々から、「もっと学び続けたい」「情報交換の場がほしい」という声が上がったことがきっかけです。
当初は、日本紅茶協会の法人会員8社に所属する18名と、協会専属インストラクター2名の計20名からスタートしました。
――日本紅茶協会との関係について教えてください。
日本紅茶協会は、紅茶関連企業を中心に約50社が参加する任意団体で、紅茶の普及を目的に講習会やイベントを行っています。ティーインストラクター養成研修もその活動の一つで、年間50〜100名の受講者を迎えています。
研修修了生が増えるにつれ、「資格を取って終わりではなく、継続的に学べる場が必要」という声が高まり、認定後の学習・研究・交流の場として日本ティーインストラクター会が設立されました。
紅茶の知識やおいしいいれ方を広く伝えるインストラクターが増えることは、日本紅茶協会や紅茶業界全体にとっても大きなプラスとなり、結果として紅茶文化の普及・発展につながっています。
仲間と紅茶を深める。学びが続くコミュニティの魅力
――研究会や勉強会では、どのようなテーマや内容を扱っているのですか?研究会や勉強会は年間5〜8回ほど開催され、取り上げるテーマは実に多彩です。
例えば、スリランカの茶園オーナーから現地のお茶づくりについて話を聞いたり、イギリス文学に登場するティーシーンを手がかりに当時の紅茶文化を読み解いたり、ティーカップやアンティーク食器の世界に触れることもあります。「いれ方」だけにとどまらず、歴史・文化・産地背景まで立体的に紅茶を学べる場になっています。
コロナ禍以降は会場とオンラインのハイブリッド形式が中心となり、講師の許可を得られた際はアーカイブ視聴も可能です。地方在住の会員も参加しやすくなり、より継続的に学べる環境が整いました。
――会員同士の交流の場も多いそうですね。
5年ごとの周年行事や、新規会員の歓迎懇親会など、直接顔を合わせて交流できるイベントも行っています。同期のメンバーでお茶会を開いたり、「ポットラック・ティーパーティー」ではお気に入りのお茶を持ち寄って淹れ合ったりと、ゆったりと会話を楽しむ時間が流れます。
知識を深められるだけでなく、「紅茶が好き」という思いがつなぐ人との出会いが、活動を続ける原動力になっている方も多いと感じます。

資格取得の先にある景色とは。広がる紅茶の活動と可能性
――ティーインストラクター資格取得後はどんな活動ができますか?ティーインストラクターの資格を取得し日本ティーインストラクター会に所属すると、日本紅茶協会主催のセミナーやイベントでスタッフ・講師として登録でき、現場に立つ機会が得られます。養成研修のサポートに入るほか、紅茶産地の大使館イベントでサービスを担当するなど、人前で紅茶を伝える経験を積める場も広がっています。

日本ティーインストラクター会主催 正会員のセミナー風景
そのほか、紅茶教室やサロンの運営、カフェとのペアリング提案、商品開発に携わるなど、活躍の場は実に多彩です。また、講師として前に立つよりも「知ることそのものが楽しい」という方もいて、研究会や勉強会に参加しながら知識を深め続ける時間を大切にしている方も多くいらっしゃいます。
日常で紅茶を楽しむ人もいれば、伝える・教える側に進む人もいます。資格をきっかけに、歩み方はそれぞれのスタイルで自由に広がっていきます。
さらに、学んだ知識を形にしたい、腕を試したいという方には「ティーインストラクター・オブ・ザ・イヤー」への挑戦という道もあります。
――活躍のステップとしても注目される「ティーインストラクター・オブ・ザ・イヤー」。具体的にはどんな内容のコンテストなのですか?
「ティーインストラクター・オブ・ザ・イヤー」は、日本紅茶協会が主催し、日本ティーインストラクター会の会員が参加できるコンテストです。制度発足20周年を記念して2011年に始まり、オリジナルレシピの提案などを通して紅茶の新しい楽しみ方を発信する場として継続開催されています。
ティーインストラクターを広く知っていただくPRの役割を持つと同時に、参加者にとっては腕を試し、発信力を磨く舞台にもなっています。若い世代の挑戦も多く、「いつか自分も」と目標にする会員も少なくありません。

日本紅茶協会主催ティーインストラクター・オブ・ザ・イヤー グランプリデモンストレーション風景
紅茶と向き合う時間が、日常を豊かにする
――「ティーインストラクター」として、日常のティータイムにどのような価値や意味を届けたいとお考えでしょうか。ティーインストラクターとして、紅茶を通じて「日常を少し丁寧に味わう時間」を届けたいと考えています。紅茶は喉を潤すだけでなく、人と向き合うきっかけになったり、自分の気持ちを整えてくれたりと、暮らしにそっと寄り添う存在です。
家族との団らんに淹れる一杯、友人との会話を温めてくれる一杯、そして一人で深呼吸したいときに湯気を眺めながら味わう一杯。どの瞬間も、紅茶があるだけで空気が少し柔らかくなり、特別なひとときに変わります。
そんな時間をつくるお手伝いができることが、ティーインストラクターとしての喜びです。
――紅茶の魅力として、特に伝えたいポイントは何でしょうか?
紅茶は、とにかく「違い」が面白い飲み物です。産地はもちろん、同じダージリンでもメーカーで香りが変わり、茶園や収穫時期によっても風味は大きく異なります。

テイスティングの様子
春摘み(ファーストフラッシュ)、夏摘み(セカンドフラッシュ)、秋摘み(オータムナル)を飲み比べるだけでも個性がわかりますし、年ごとに仕上がりが変わる「今年の味」との出会いも紅茶ならではです。
これは実際に飲んでいただかないと伝わりにくい部分ですが、だからこそ、研究会やテイスティングの場で体験していただきたいです。

――現代の暮らしにおける紅茶文化は、今後どのように広がっていくと思いますか?
近年はアフタヌーンティーの人気も高まり、紅茶の楽しみ方が広がっていると感じています。スイーツと合わせるだけでなく、食事に合わせたペアリングを楽しむ方も増え、イギリス発祥のクラシカルなスタイルにとらわれない“自分らしいティータイム”が、現代の日本の暮らしの中に少しずつ根づいてきている印象です。
歴史や製造工程といった基本知識は変わりませんが、各国で育まれた茶文化や多様な飲み方に触れることで、「こうしなきゃ」という決まりに縛られず、より自由に紅茶を味わうきっかけになります。
日本ティーインストラクター会としても、そうした知識に裏打ちされた“自由な楽しみ方”を多くの方に広げていきたいと考えています。

――これからティーインストラクター資格を目指す方に、メッセージをお願いします。
紅茶は、人と人の距離をそっと近づけてくれる飲み物だと思っています。「お茶しませんか?」というひと言が、初対面の距離を縮めてくれる場面って昔からありますよね。
そして、学びを深めるほど選択肢が増えていくことも紅茶の魅力です。ストレート、ミルク、レモンだけでなく、蜂蜜やお菓子との組み合わせ、食事とのペアリングなど、知識が増えるほど「次はどんな一杯にしよう」と、日常が少し楽しくなります。
「紅茶をもっと知りたい」「好きな気持ちを形にしたい」その想いがあれば、学びの時間はきっと豊かで楽しく、心を満たしてくれるはずです。
さらに、その先には「教える」「イベントに関わる」「お店を持つ」など、紅茶を通じたさまざまな未来が開けています。資格取得は、その最初の扉です。ぜひ一緒に、紅茶の世界を深めていきましょう。
一杯の紅茶からはじまる、新しい世界
日本ティーインストラクター会は、設立から約35年。20名で始まった会は、いまや全国に仲間を持つ大きなコミュニティへと広がりました。学び続ける場所があり、同じ興味を持つ人と出会える。紅茶を通じて世界がつながる温かな循環がここにあります。「紅茶が好き」その気持ちから始まった一杯が、学びを通して自分の楽しみに変わり、やがて誰かに届ける一杯へと育つこともあるでしょう。
もし紅茶をもっと知りたい、楽しみたいと感じたら、日本紅茶協会や日本ティーインストラクター会正会員が主催するセミナーの扉を叩いてみてください。きっと、あなたの世界もふわりと広がります。