1995年設立、現在は約1万5千人の会員と全国に約950校の加盟スクールを擁する日本アロマコーディネーター協会(JAA)。協会最大の特徴は、知識の習得にとどまらず、医療・スポーツ・美容・介護・子育て支援など幅広い分野で「社会に通用する人材」を育てることにこだわってきた点にあります。
なぜ、JAAの資格取得者は多様な現場で活躍できるのか。その理由は、設立以来一貫して掲げる「教育を通じた人材育成」にあります。
本記事では、日本アロマコーディネーター協会(JAA) 顧問・木村 保司さんへの取材を通じて、アロマを仕事として身につけるための学びの本質に迫ります。
日本アロマコーディネーター協会(JAA)が定義する「アロマコーディネーター」の本質
なぜ「セラピスト」ではなく「コーディネーター」なのか
──他の協会は「アロマセラピスト」という名称が多いなか、日本アロマコーディネーター協会(JAA)が「アロマコーディネーター」という名称にした理由を教えてください。木村さん: アロマセラピストというと、施術者のイメージが強く、医療現場の資格者のような名称になってしまいます。
でも、アロマは医療に限らず、美容、福祉、スポーツ、ペットアロマ、空間演出など、さまざまな現場で活かせるものです。
だからこそ、日本アロマコーディネーター協会(JAA)はあえて「コーディネーター」と表現しました。
アロマを幅広い分野でコーディネートして活用できる人材を育てたいという思いを込めています。

日本アロマコーディネーター協会(JAA)顧問・木村 保司氏
日本アロマコーディネーター協会(JAA)が31年間守り続けてきた「教育」へのこだわり
──日本にはいくつかのアロマ関連団体がありますが、日本アロマコーディネーター協会(JAA)最大の特徴はどこにあるとお考えですか。木村さん: 日本には、たくさんの精油メーカーが中心となって設立された団体があります。
それぞれに特徴がありますが、日本アロマコーディネーター協会(JAA)が設立以来一貫して大切にしてきたのは、「教育を通じたアロマの普及」です。
しっかりとした知識と技術を身につけて初めてアロマの理解を深め、社会で活躍することができる。そういった啓蒙活動に力をいれている協会だと自負しています。

日本アロマコーディネーター協会(JAA)設立の背景にも特別な思いがあります。
精油は非常に濃密な液体で、妊娠中に避けた方がいい種類があったり、光毒性によって肌荒れやシミの原因になるものもあったりします。
正しく・安全に実践するためには、最低限の知識が絶対に必要です。アロマは特に「教育が必要な分野」であることを、私たちは創業当初から言い続けてきました。
現場で活きるスキルを。プロを育てるJAAの教育のこだわり

3つの制度で設計された「学びのステップ」
──日本アロマコーディネーター協会(JAA)には「ライセンス制度」「トレーナーズ制度」「検定試験制度」の3つがあるとのこと。それぞれの概要と違いを教えてください。木村さん: まず、ライセンス制度が私どものベーシックな資格体系です。
理論と技術の両面をじっくり学んでいただき、通常3〜6ヶ月かけて取り組む内容です。受講費用は10〜20万円以上が目安で、試験に合格してJAA会員として登録されると、求人情報の紹介や独立開業のサポートなどのフォローを受けることができます。
次に、トレーナーズ制度は、比較的低価格(3万円台〜)で、1週間以内の短期間で技術を習得できるコースです。
テキストと動画教材を組み合わせた学習スタイルで、ハンドトリートメントやヘッドトリートメント、ショルダーライン(首・肩)のトリートメントや腰回りのケアなど、技術系の内容が中心。
修了後はトレーナーとして登録でき、自分が学んだ内容を一般の受講者に指導することも可能になります。技術はやればやるほど磨かれていきます。
一度習得すれば、70〜80代になっても続けられる仕事なので、近年特に力をいれており、年に1回ほど新しい講座も追加しています。
最後に、検定試験制度は、ライセンスをすでに持っている方が専門性をさらに深めるためのコースです。費用は3〜7万円程度。
講座の一つが、日本アロマコーディネーター協会(JAA)主任講師・高橋佳璃奈先生オリジナルの体系である、アーユルヴェーダの知恵を元にアロマセラピーの方法を融合した健康・美容法「アーユルヴェーニックアロマセラピー」です。
ほかにも、国産精油に特化した「ジャパニーズアロマ検定」、スキンケアに特化した検定講座、自然療法と家庭教育を取り入れながら命のケアを考えるチャイルドケアの資格などが用意されています。
今の仕事にプラスアルファの専門性を乗せたい方向けの学びですね。

未経験者がつまずきやすい「壁」と日本アロマコーディネーター協会(JAA)のつながり支援
──未経験からアロマコーディネーターを目指す際、受講生が最もぶつかりやすい悩みはなんですか。また、それをどうサポートされていますか。木村さん: コロナ禍をきっかけに、それまでにはなかった会員さんの悩みが浮き彫りになりました。
コロナ前は、教室やイベント会場に行けば同じ目的を持った仲間ができて、友達も自然とできていたんです。しかし、それが難しくなってしまいました。
学びにおいては、同じ目標を持つ仲間の存在が大きな支えになります。
誰かと悩みを共有できたり、頑張っている姿を見て刺激を受けたりすることで、続ける力につながります。孤独な状態で一人で続けることは、学びのハードルを大きく上げてしまうんです。
そのためコロナ禍が明けてからは、協会として会員同士がつながれる場を意識的につくっています。
沖縄でのアロマと発酵食のコラボイベントや、岐阜で自然化粧品の材料を作っているメーカーさんとのハーブを使ったクラフト体験など、会員が集まれる機会を少しずつ増やしているところです。

課外セミナーの様子
また、会員さん自身が地元でイベントを立ち上げてくれることもあり、その際にはサポートも行っています。
まだ十分とは言えませんが、「つながりの場」を増やしていくことはこれからも大切にしていきたいテーマですね。
オンライン×対面で深まる、これからの香りの学び

教材キットのイメージ
オンラインで“香り”を伝えるための工夫と、対面の価値
──香りを扱うアロマセラピーをオンラインで学ぶことには、難しさがあるように思えます。どのような工夫をされていますか。木村さん: 通信講座では、教材に精油セットや必要な素材・資材を同封し、自宅で本物の香りを体感しながら学べるようにしています。
実際に精油を扱いながら受講できる形にすることで、できるだけリアルな学びになるように工夫しています。オンデマンド配信も活用し、遠方の方や忙しい方でも参加しやすい環境を整えています。

JAAオリジナルブレンド 「L-care」

日本ならではの植物「クロモジ」の芳香蒸留水の魅力や活用方法を伝える講座の教材
コロナ禍で変わった学び方、変えなかった「つながり」
──コロナ禍を経て、日本アロマコーディネーター協会(JAA)での学び方はどのように変化しましたか。木村さん: コロナ前は全国各地で、日時が限定されたセミナーや講習会を行っていました。主要都市での開催が中心だったので、興味があっても距離や時間の都合で参加できない方も多かったんです。
オンライン開催になったことで、住んでいる場所に関係なく、自宅から学べるようになりました。学びたいと思っている方が参加しやすい環境になったのは、プラスの変化だと感じています。
ただ、変えてはいけないと思っているのは「人と人のつながり」です。
日本アロマコーディネーター協会(JAA)で同じ目標を持つ仲間と出会い、励まし合いながら学ぶことや、地域の中でアロマの活動を広げていくことは、画面越しだけでは難しい部分があります。
オンラインと対面をうまく組み合わせたハイブリッドな形で続けていくことが、これからの課題だと考えています。

協会主催のイベントの様子
卒業生が証明する、アロマ資格をキャリアに変える力
震災ボランティアから地域連携まで——広がる卒業生の活躍
──実際に学ばれた受講生の方の変化で、印象的だったエピソードはありますか。木村さん: 印象的なエピソードはたくさんあります。一つは、東日本大震災の際の出来事です。
多くの日本アロマコーディネーター協会(JAA)会員が、アロマボランティアとして被災地に向かいました。
四国や北陸など遠方から参加した方もいて、中には活動がきっかけで現地に移住した方もいらっしゃいます。熊本地震でも、九州各地の会員が駆けつけました。
ボランティアの中でリーダー的な役割を担った方もいて、「アロマで社会の役に立ちたい」という思いが、会員の間で一気に広がった出来事でした。
もう一つ印象的なのが、視覚障害のある方々にアロマを教えている講師のケースです。
視覚障害のある方は、あんまや鍼灸を学ぶ方が多く、主に女性に多いのですが、そこにアロママッサージを組み合わせたいというニーズがあります。その講師は、受講者のために点訳機を使い視覚障害者向けのテキストを自ら作成し講座を立ち上げました。
ほかにも、地域の農産物を使った化粧品開発で行政と連携した方や、アロマ・ハーブに関する本を出版した方、会社を設立して大きく事業を展開している方など、活躍の形は本当に多岐にわたります。
アロマで自立できる人に共通する、3つの特徴
──日本アロマコーディネーター協会(JAA)での資格取得後、アロマを仕事として自立できている方に共通する特徴はありますか。木村さん: そうですね。大きく分けると、共通点は3つあります。
一つ目は、「自分の得意分野を見つけている」ことです。
アロマと出会う前の職歴や経験が活かされることが多く、美容や看護、介護など、それぞれのバックグラウンドをもとに「自分はこの分野でアロマを活かしていく」という軸をしっかり持っている方が多いですね。
二つ目は、「勉強熱心・研究熱心」であること。資格取得後も学び続け、知識や技術を深めていく姿勢が、結果的に専門家としての信頼につながっています。
そして三つ目は、「明るく行動的で社交的」であること。一言でいうと、元気で前向きな方ですね。積極的に行動していける方が活躍されています。
アロマや癒しの分野には、「学びたい」と思わせる何かがあるのかもしれません。
深く学んでいくことで、自分自身も整っていく。そうしたプロセスを経て、社会の役に立ちたいという思いを持つ方だからこそ、結果的に人を惹きつけていくのだと思います。
香りで社会を癒やす——これからのJAAの展望
若い世代へ届けたい「アロマをもっと気軽に、楽しく」という想い
──これからの数年、日本アロマコーディネーター協会(JAA)として新たに挑戦したいことを教えてください。木村さん: これからの数年で日本アロマコーディネーター協会(JAA)として取り組みたい大きなテーマの一つが、「次の世代にアロマをどうつないでいくか」という点です。
アロマは30年ほど前に広まり、当時学んだ世代の方々は今も現場で活躍しています。
一方で、若い世代がアロマを学ぶ機会は、昔に比べて減ってきている。癒しやヒーリングの分野にもさまざまな選択肢が増え、アロマに触れるきっかけ自体が少なくなっていることも背景にあります。
また、アロマが社会的に評価されるようになる過程で、専門性を高める方向に進んできました。
その結果、学習内容が高度化し、費用面でも負担が大きくなり、「気軽に楽しく学ぶ」という本来の魅力から少し離れてしまった側面もあります。
そこで今後は、もっと若い世代にも親しんでもらえるように、日常生活の中で楽しめるアロマの学び方を広げていきたいと考えているんです。
たとえば、アロマクラフトとして、ローションや香水、入浴剤を作るなど、暮らしの中で活かせる内容を中心に、費用面の負担も抑えたカリキュラムを検討しています。

アロマは特別なものではなく、生活に寄り添う身近な存在です。次の世代にその楽しさや価値をどう伝えていくか。それこそが、これからのJAAとしての大きな挑戦です。
日本の香り文化には、まだ見ぬ可能性がある
──日本のアロマ文化の可能性について、どのようにお考えですか。木村さん: 日本のアロマ文化には、まだまだ大きな可能性があると感じています。ここ15年ほどで、沖縄の月桃やシークワーサー、岩手の黒文字など、国産精油の製造・販売が増えてきました。
柚子は世界に誇れる香りですし、ヒノキやヒバといった森林系の香りも、日本ならではの魅力だと思います。
また、香りが人の記憶や感情に与える影響はとても大きく、ホテルやショールームなどでも、空間演出として香りが活用されるようになってきました。
香りによってその場所の印象が強く残ったり、滞在時間が伸びて結果的に購買につながったりと、ビジネスの場面でも価値が広がっている。
日本のアロマは「癒し」にとどまらず、観光や地域活性、空間デザインなど、さまざまな分野と結びつきながら、今後さらに発展していく余地があると考えています。
まずは触れてみることから——香りの世界への一歩
──最後に、これから日本アロマコーディネーター協会(JAA)で学びを始めようか迷っている方へメッセージをお願いします。木村さん: アロマの世界は一歩入ると、「こんなに面白いんだ!」と思えるものなんですよ。
自分の肌に合ったローションやクリームが自分で作れる、香りの奥深さに触れると本当に虜になってしまうくらいの世界があります。

まずは旅行先でその土地の花や香りの商品に手を取ってみる、ホテルに入ったときの心地よい香りを感じてみる。そんな小さなきっかけで構いません。
香りの世界は学べば学ぶほど奥が深く、日本の香り文化の豊かさと可能性に気づかされます。
ぜひ少しずつ興味を持っていただいて、そこから一歩踏み出し、学びたいと思っていただけたら嬉しいです。