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歯科リップアートメイク技術で、自分らしく働く。一般社団法人リップメイク協会が届ける、資格を活かす新しい働き方

歯科リップアートメイク技術で、自分らしく働く。一般社団法人リップメイク協会が届ける、資格を活かす新しい働き方
  • 今回お話を伺った方
    • 一般社団法人リップメイク協会 会長

      今村 知恵

      歯科医師として診療に携わる一方、医師・看護師を対象としたアートメイク講座を行っている。歯科衛生士からの問い合わせが増えたことをきっかけに、2025年に一般社団法人リップメイク協会を設立。歯科リップアートメイクの正しい知識と技術の普及を通じて、美容を入り口に口腔環境や全身の健康へ関心を広げる活動に取り組む。

唇にほんのり血色を添えてくれるリップアートメイク。忙しい毎日でもすっぴんに自信が持てると、美容医療の入り口として注目を集めています。

しかし、施術についての法律上のルールは意外と知られていません。 

厚生労働省は、針で皮膚に色素を入れるアートメイクを医行為と位置づけています。

歯科領域における歯科医師・歯科衛生士の施術範囲については、関係法令や行政上の取扱いを個別に確認する必要があります。

その一方で、無資格者による施術も問題となっています。

そんな中、歯科医師と歯科衛生士が正しい知識と技術で唇のアートメイクを届けようと、2025年に立ち上がったのが、一般社団法人リップメイク協会です。

今回は自身も歯科医師としてアートメイクに携わってきた同協会 会長の今村知恵さんに、協会設立の背景から講座の中身、そしてその先に見据える歯科医療の未来まで、たっぷりとお話を伺いました。

一般社団法人リップメイク協会 会長 今村知恵さん

一般社団法人リップメイク協会 会長 今村知恵さん

 一般社団法人リップメイク協会 公式サイトへ 

正しい知識を伝えたい。協会を立ち上げた理由

――まずは、一般社団法人リップメイク協会がどのような協会なのか教えてください。

今村さん:一般社団法人リップメイク協会は、歯科医師や歯科衛生士に向けて、リップアートメイクの正しい知識と技術を伝える協会です。

2025年3月に立ち上げ、同年6月ごろから活動を始めました。現在の会員数は300名ほどで、検定取得者は200名弱です(取材時点:2026年8月)。

――協会を立ち上げた背景を教えてください。

海外では、国や地域によってアートメイクの位置づけや、施術者に求められる資格が異なります。

日本では、厚生労働省の通知により、針を用いて皮膚に色素を入れるアートメイクは医行為に該当するとされています。

その後、歯科領域でも口唇を対象としたリップアートメイクへの関心が高まっていきました。

もともと私は歯科医師として、主に看護師さん向けにアートメイク講座を行っていました。

そして、2024年ごろから歯科衛生士さんからの問い合わせが増え、協会として取り組んだほうがよいのではないかと周りの先生たちと話し合いました。そこで、私が代表となって活動を始めたのです。

――今村さんご自身もアートメイクを経験されたことはあるのでしょうか。

今村さん:私が初めてアートメイクに出会ったのは、今から20年ほど前、20歳くらいの頃です。当時、一般の方から施術を受けたことをきっかけに興味を持ち、その方から技術を学びました。

当時は、アートメイクの法的な位置づけが今ほど広く知られていなかったように思います。

振り返ると、衛生管理や施術体制に不安が残る環境でしたが、幸い感染などのトラブルはありませんでした。

その後、歯科医師としてリップアートメイクに携わるようになり、あらためて活動を始めました。

リップアートメイクをしている画像

リップアートメイクを施術している様子。


――医療機関で、医療従事者が施術することが重要なのですね。

今村さん:そうですね。日本では、アートメイクは医療機関で、医師などの適切な管理のもとに行う必要があります。

必要な資格を持たない方が業として施術すると、医師法違反にあたります。

皮膚に針を刺して色素を入れ、麻酔を使用することもある繊細な施術だからこそ、正しい知識を広く伝えたいと考え、協会を立ち上げました。

唇から歯へ、歯から健康へ。「リップメイク」という名前に込めた願い

――協会名に込められた思いがあると伺いました。

今村さん:日本では、歯に不調を感じてから歯科医院を受診する方も少なくないと感じています。

国民皆保険制度によって歯科治療を受けやすい環境が整っている一方、治療だけでなく、予防や日常的な口腔ケアにも目を向けてもらいたいという思いがありました。

もちろん、リップアートメイクがきっかけになり、歯や口もとのケアにも関心を持つ方もいらっしゃいます。

「ホワイトニングをしてみようかな」「クリーニングしようかな」「歯並びを変えようかな」と、口もとから始まる健康維持への関心が広がっていくんです。

入り口は美容であっても、そこから一般的な歯科治療や日頃の口腔ケアにも目を向けてもらえたら、という願いを協会名に込めました。

協会では「医食同源」を理念に掲げ、美容を入り口に、口腔環境や全身の健康へと関心を広げることを目指しています。

スーパーバイザーには抗加齢医学の研究に長年携わる米井嘉一先生を迎え、理事にも栄養療法や補完医療など、それぞれの分野で専門的な活動を行う歯科医師が名を連ねています。

口腔内からの麻酔に対応。歯科リップアートメイクの特徴

――「歯科リップアートメイク」ならではの特徴を教えてください。

今村さん:歯科領域で施術できる範囲は、口唇に限られます。そのため、頭皮や眉、アイラインなどへの施術はできません。

口唇に特化していることが、歯科リップアートメイクの特徴です。

歯科医師が口腔内からブロック麻酔を行えることも、大きな特徴ですね。痛みの感じ方には個人差がありますが、麻酔を適切に使いながら、できるだけ負担に配慮して施術します。

講師がリップメイクを施術している様子の画像

――看護師さんが施術する場合とは、麻酔の方法が違うのでしょうか。

今村さん:医科のクリニックでは、医師が局所麻酔を行う場合もあります。一方、看護師さんが施術する際は、塗るタイプの表面麻酔を用いることが多いです。

施術方法や麻酔の種類、受ける方の感じ方によって、痛みの程度は異なります。歯科医師は日頃から口腔内への麻酔を扱っているため、その経験を生かせることが歯科ならではの強みだと考えています。

――歯科衛生士さんが麻酔を行うこともあるのでしょうか。

今村さん:協会としては、リップアートメイクの麻酔は歯科医師が行うべきだという指針を掲げています。

他の団体では衛生士さんによる歯科麻酔の講座を行っているところもあります。しかし、うちの協会では2026年5月31日をもって歯科浸潤麻酔講座をいったん終了しました。

歯科衛生士による麻酔をめぐっては、今後の制度や研修体制の動向を見守る必要があると考えています。協会としても、国の方針に沿って対応していく予定です。

オンラインにも対応。LINE添削を取り入れた技術指導

――リップアートメイク検定は1級・2級・3級と段階ごとに分けられ、さらにリップエキスパートも取得可能とのことで、検定と講座との関係性を教えてください。

今村さん:基本的には、初めてリップアートメイクを学ぶ方はまず3級を目指します。

講座で座学と実技を学んだあと、モニターさんに施術を行い、その結果を講師陣が審査してOKが出れば3級取得という流れです。オンライン講座の場合も、症例写真を送っていただいて同じように審査します。

3級取得後は、より詳しい色彩や技術を学ぶ講座があるので、ステップアップを目指す方は講座を受けていただき、そこでも審査を通れば2級取得となります。

教材セットの画像

座学を講師から学ぶ生徒の画像

初めに座学を学び、その後技術を実践していきます。


――再試験があるそうですが、何度でも受けられるのですか。

今村さん:回数に決まりはなく、モニターさんに再度施術を行って、色の入り具合や腫れの状態を見て判断します。

ただ、皆さん本当に勉強熱心で、200名弱のうちほぼ全員が一度で合格されました。

――オンライン講座で学習するのは難しくないのでしょうか。

今村さん:オンラインでも技術を確認できるよう、指導のポイントを整理しています。

そのポイントに忠実に沿って施術することが一番大切です。つまり、対面・オンラインの違いよりも、その人の頑張り次第ですね。

人工皮膚に見立てたシリコンマットに彫った写真や動画をLINEで送っていただき、講師がチェックする形で進め、最終的には実際のモニターの方に施術します。

施術しているところをZoomやLINEのビデオ通話でチェックし、その場で指導するので、対面と大差なく学習することが可能です。

彫り方の説明の画像

――写真だけで、そこまで細かく指導できるものなんですね。

今村さん:圧の強さや色ムラなど、写真を見れば一目瞭然です。マシンで針を刺して「適切に彫ると、このようなグラデーションになります」「振り方をもう少し速くしてみましょう」と、細かくアドバイスします。

ただ人工皮膚は平らなのに対して人間の唇はカーブしていて厚みも人それぞれなので、モニターさんへの施術でつまずくことも多いです。

モニターさんへの施術でつまずいたときにも講師へ質問できるため、毎日のように質問をする方もいらっしゃいます。

LINEでキャッチボールしながら、一緒に課題を乗り越えていくような感じです。色選びの悩みなども多いですね。期間中は無制限で質問できるので喜ばれています。

――色選びも難しいのでしょうか。

今村さん:アートメイクは初回だと人間の条件反射で、インクを異物として押し出してしまい、色が定着しにくいんです。

仕上がりには個人差がありますが、2回以上の施術で完成に近づいていくのが一般的です。

人それぞれの元の唇の色も関係してくるので、奥が深いですね。最初のうちは「色が入ればうれしい」という段階。その後、だいたい30症例を超えたあたりで「思ったような色にならない」という壁にぶつかります。

そこで色彩学をもっと学びたいと感じて、2級の受講を目指す人が多いです。

全国各地からオンラインへ。広がる学びのかたち

――現在、2級以上を取得された方はどれくらいいらっしゃいますか。

今村さん:2級の受験資格として、最低100症例をこなしていただく必要があります。

皆さんお仕事をしながらなので、そこまで到達できる方が少なく、取材時点(2026年8月)では、2級取得者は1名です。100症例を目指して頑張っている受講生が何名かいらっしゃる状況ですね。

――資格取得後もサポート体制はあるのでしょうか。

今村さん:資格取得後も、公式LINEから質問や問い合わせができます。

引き続きオンラインでのLINE添削がしたい場合は、追加の費用が必要になりますが、月額で質問回数無制限のものがあるので、そちらにお申し込みいただく形です。 

――東京・大阪・名古屋・福岡・沖縄など、各地で講座を開催してきた背景を教えてください。

今村さん:福岡は自分のクリニックを会場に、東京は理事の林先生、沖縄は理事の井上先生のクリニック、大阪・名古屋も先輩のクリニックをお借りしています。初めは、そこで講座を行っていました。

ただ、費用面の理由などから一定人数が集まらないことも多く、見送りになることもありました。

最近は、オンラインで受講される人や、法人単位でクリニックに講師が出向く出張講座の需要が増えています。

地方の場合に多いですが、衛生士さんが2名ほど受ける場合、モニターさんの帯同や交通費の負担を考えると、出張講座に切り替えたほうが効率がいいんですよね。

クリニックで講座をしている画像

要望があれば、それぞれのクリニックへの出張講座も可能。自分の働いているクリニックで受講できるのはうれしいポイントです。

キャリア拡大を目指す。歯科衛生士たちの新しい働き方

――受講者は歯科医師と歯科衛生士、どちらが多いのでしょうか。

今村さん:今は圧倒的に歯科衛生士さんが増えています。歯科医師は、アートメイクよりインプラントなど他の治療の方が売上効率がいいと考える人も多く、よほど好きな先生でない限り続けにくいのが現状です。

その一方で衛生士さんは、通常の治療も好きだけれど、アートメイク技術を習得し副業として取り入れ、プラスアルファの働き方の選択肢にしている人が多くなってきました。

――今後は、歯科衛生士さんのキャリアの拡大につながっていくのでしょうか。

今村さん:そうですね。子育てなどでフルタイムの勤務が難しい時期の働き方として、受講を検討される人も増えてきました。

予約に合わせて勤務時間を調整できる場合もあり、子育て期の新たな働き方として関心を持つ歯科衛生士さんも増えています。

中には「アートメイク一本でやっていきたい」という意気込みで来られる、新人の歯科衛生士もいらっしゃいます。

歯科衛生士さんがキャリアの選択肢を広げられる分野として、その一助になればと思います。

座学を学ぶ様子の画像

受講者の9割以上は女性。歯科衛生士としての働き方の選択肢を広げるために学ぶ方もいます。


――受講生さんの変化を感じるエピソードはありますか。

今村さん:座学を始めた頃と比べ、現場に出ていく頃の変化は目に見えてわかります。身につけるものが変わったり、目の輝き方が変わったり。みなさん、キラキラ輝いていくんです。

技術だけでなく、モチベーションの保ち方やメンタル面についても講座の中で少しずつお伝えしているので、「先生の一言で考え方が変わりました」と言ってくださる方もいて、内面から変わっていく姿を見られるのはうれしいですね。

正しい情報を、次の世代へ。協会が見据える未来

――今後、美容医療市場が拡大していく中で、協会が果たすべき役割をどうお考えですか。

今村さん:市場が大きくなればなるほど、情報も錯綜します。

当協会には歯科医師や医師などの医療従事者が多く所属しているため、法令に沿った情報と技術を伝えることを徹底しています。

間違った方向に進まないよう、みんなを輝かせていけるように協会として動いていきたいですね。

講座の様子の画像

歯科衛生士さんがリップアートメイクの技術を生かして輝ける未来のために、正しい知識を伝えています。


――最後に、学びを始めようか迷っている方へメッセージをお願いします。

今村さん:何事も一歩を踏み出す勇気って、なかなか出せないものだと思います。でも意外と、一歩踏み出してみるとトントンと進んでいくものなんですよ。

問い合わせをしてみるだけでも変わってくると思うので、あまり重く受け取らずに、気軽な気持ちでLINEにメッセージを送っていただけたらうれしいです。

――本日はありがとうございました。
一般社団法人リップメイク協会 公式サイトへ

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この記事を書いた人
森田かえ

森田かえ

教育・子育て・暮らしを中心に執筆する取材ライター。 人の想いや背景を丁寧に聞き取り、言葉にすることを大切にしている。 子どもや家族、地域にまつわるテーマを軸に、読み手の暮らしに届く文章を心がけている。 お酒を飲みながら推しの番組を見る時間が、ささやかな幸せ。

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