手拍子や会話を交えながら、歌を通じて参加者の笑顔や記憶、心の動きを引き出しています。
資格取得のきっかけや活動への思い、現場で感じる音楽の力について伺いました。
ボランティアから始まった「懐メロ歌謡ショー」
2023年から地元の特別養護老人ホームで、ボランティアとして懐メロ歌謡ショーの活動を始めました。
昭和歌謡を皆様と一緒に歌いながら、手拍子や会話も交える参加型のレクリエーションです。
その活動を通じて、音楽によって高齢者の方々の表情や反応が大きく変わることを実感し、2024年9月に音楽健康指導士の資格を取得しました。
それからは仕事として活動を本格化させ、現在は老人ホームや高齢者住宅、デイケアセンターなどで、シニア世代の方々を対象にカラオケを使った参加型の懐メロ歌謡ショーを行っています。

音楽には、人の心を元気にする力がある
音楽健康指導士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。
二人の子育てが一段落した頃、赤坂の特別養護老人ホームで懐メロ歌謡ショーのボランティア活動を3年ほど続けていました。
その活動を続けるうちに、「音楽には人の心を元気にする力がある」と強く感じるようになったんです。
そんな時、知人から「音楽健康指導士」という資格があることを教えていただきました。
高齢者の心身のメカニズムについて学ぶことで、より良い活動の提供や、施設の方々からの信頼にもつながるのではないかと思い、資格取得を目指しました。
資格取得で生まれた、安心感と自信
資格を取る前と後で、いちばん変わったことは何ですか。
資格を取得する前は、参加者の方の表情が変わらないと、歌唱中に「つまらないのかな」と不安に思うこともありました。
しかし、医学的・心理学的な視点を学び、加齢によって表情筋が動きにくくなるケースなどがあることを知ってからは、より参加者の視点に立って歌謡ショーを行えるようになりました。
専門知識が身についたことで不安が少なくなり、以前よりも自信を持ってパフォーマンスに挑めていると感じています。
また、資格があることで施設の皆さんとのコミュニケーションもスムーズになり、活動の幅や訪問する施設数が増えたことも、大きな変化だと思います。
歌が呼び覚ます、笑顔と記憶
活動の中で、印象に残っている参加者の反応はありますか。
普段あまり表情を見せない方が、笑顔になって一緒に歌い始めることがあります。
握手を求めて車いすから思わず立ち上がってしまい、施設のスタッフの方が驚かれるような場面もありました。
また、以前に加山雄三さんの「君といつまでも」を歌った時には、ご夫婦で顔を見つめ合いながら歌われ、奥様が涙を流されていたことがありました。
ほかにも、ストレッチャーで横になっている方が指でリズムを刻んでいるのを見るときなども、本当に胸が熱くなります。
音楽の力を特に実感するのは、どのような瞬間ですか。
昭和歌謡が流れると、当時の思い出やご家族との時間がよみがえり、皆さんの歌声や笑顔が広がっていく瞬間です。
歌詞を覚えていらっしゃる方も多く、音楽によって記憶や感情を呼び覚ますことができるのだと、毎回驚かされます。
「ここ、笑うところですよ〜!」と自然に巻き込むのが一体感のコツ
活動の中で大切にしていることは何ですか。
コンサートの進行では、参加者の方を飽きさせないよう細やかな工夫を凝らしています。
ただ歌を届けるだけでなく、曲の合間に「この曲は昭和〇年の発売でね……」といったエピソードを添えるようにしています。
そうすることで、参加者の皆さんが自然とその時代へとタイムスリップし、胸に抱く大切な“青春”を思い出すきっかけになればと考えています。
何より大切にしているのは、親しみを持った温かい語りかけです。
現代では懐メロに触れる機会が少なくなっているからこそ、少しでもその魅力を楽しんでいただきたいと思っています。
時にはユーモアを交え、「ここ、笑うところですよ〜!」と楽しげにツッコミを入れることもあります。
そうした自然体での巻き込みを意識することで、会場全体が一つになり、誰もが心から楽しめる最高の雰囲気が生まれると感じています。
難しさを感じることや、工夫していることはありますか。
公演中やMCのときに、参加者の方が積極的にお声をかけてくださることがあります。
そのお気持ちはありがたく受け止めつつも、全体の進行や流れを止めないようにうまく進める工夫をしています。
また、常に皆様の表情や反応を見ながら歌うことも意識しています。
「今日は楽しかったなぁ」とその日の夜にお布団に入ったとき、ふと思い出していただけるような、そんな温かい時間にしたいと思っています。

人生の先輩方から、元気をいただく
この活動を通して、ご自身が元気をもらったり、学んだりしたことはありますか。
ステージから見える皆様の弾けるような笑顔や大きな歌声、そして不自由なお身体でも一生懸命に拍手を送ってくださる姿に、私は毎回胸が熱くなり、深い感動をいただいています。
私自身も60歳という人生の節目を迎えました。こうして人生の先輩方と温かい交流を重ねる時間は、自分自身が「これからどう素敵に歳を重ねていくか」「どう生きていくか」を深く考える、かけがえのないきっかけになっています。
かつて、私の父が音楽を通じて多くの人々へ“人生の応援歌”を届けてきたように、私もまた、この「懐メロ歌謡ショー」を通じて、たくさんの方に笑顔と元気を届けていきたい。それが今の私の心からの願いです。
コンサートの終わりに、利用者の方から「あなたの明るさに元気がもらえたよ」と声をかけていただくこともあります。
私のこの活動が、皆様の毎日の暮らしに、ほんの少しでも鮮やかな彩りを添えられているなら、これ以上の喜びはありません。
地域の交流の場づくりへ
音楽健康指導士としての活動が、周囲や地域に与えている影響をどのように感じていますか。
私たちの活動をきっかけに、施設の中にも嬉しい変化が生まれています。
カラオケの時間が自然と増えたり、新しい機械を導入してくださったりと、音楽を楽しむ文化がより深く根づいてきました。
ご家族からも「懐メロ歌謡ショーの日に合わせてショートステイを利用したい」といった大変励みになるお声をいただき、心から嬉しく思っております。
今後は施設内にとどまらず、地域の「通いの場」などでも、歌を通じた交流の場づくりをさらに広げていきたいと考えています。
ご自宅にこもりがちになっている方々が、一歩外へ踏み出す安心なきっかけになれたら幸いです。
地域の介護予防・フレイル予防という観点からも、「昭和歌謡」という素晴らしいコンテンツには大きな可能性があります。
音楽健康指導士として、これからも積極的に地域と関わり、歌を通じた温かい交流の場を多くの皆様へお届けしてまいります。
これから音楽健康指導士を目指す方へ
これから音楽健康指導士を目指す人に、伝えたいことはありますか。
この活動は、私自身が元気である限りずっと続けていきたいですし、70代、80代を迎えても変わらずに続けられると確信しています。
私にとっても、昭和歌謡はもはや「人生」そのものと言えるかもしれません。
戦前戦後の激動の時代を必死に生き抜いてこられた方々にとって、昭和歌謡はただのメロディではなく、まさに“人生の応援歌”です。
皆様にも心に残る大切な思い出の曲があるように、音楽には人の心を一瞬で動かし、元気を引き出す大きな力があります。
私の活動を通じて、地域の高齢者の皆さんの生きるパワーになることができれば、これ以上の幸せはありません。
「音楽が好き」「人が好き」。その純粋な想いさえあれば、きっと誰もが誰かの笑顔に繋がる活動を始めていけるはずです。
音楽健康指導士インタビュー 青木裕子さんまとめ
音楽健康指導士としての活動をひと言で表すなら、「音楽で、笑顔と元気を届ける活動」。懐かしい歌を一緒に歌う時間は、単なるレクリエーションにとどまらず、記憶や感情、人とのつながりを呼び覚ます時間でもあります。
昭和歌謡を通じて、高齢者の毎日に笑顔と元気を届ける活動は、これから地域の交流の場へも広がっていきます。
日本音楽健康協会所属、音楽健康指導士インタビュー紹介


まず、現在はどのような場所で活動されていますか。