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今回お話を伺った方
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ティーアカデミージャパン主宰
スチュワード 麻子氏英国在住歴20年以上、茶の専門家として約30年にわたり活動している。UK Tea Academy講師、国際ティーコンペ審査員などを務め、英国紅茶文化と日本茶文化をつなぐ教育・監修・執筆・講演を行う。
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そんな思いを抱く方に向けて学びの場を提供しているのが、英国発のお茶教育を日本で展開するティーアカデミージャパンです。
主宰するのは、約21年間イギリスに在住し、UK Tea Academyの講師として活動しているスチュワード麻子さん。2018年に日本でティーアカデミージャパンを立ち上げ、紅茶だけでなく緑茶・烏龍茶・白茶など、世界のあらゆる茶類を「横断的・論理的」に学べる場を提供してきました。
今回はスチュワード麻子さんに、ティーアカデミージャパン設立の背景やコースの特徴、受講生の変化、今後の展望などについてお話を伺いました。
イギリスで培った経験を、日本の学びへ。ティーアカデミージャパン設立の背景

ティーアカデミージャパン主宰 スチュワード麻子さん
――ティーアカデミージャパンを立ち上げられた背景や、英国発のお茶教育を日本で提供するに至った経緯を教えてください。
私はもともと、約21年間イギリスで暮らしていました。前職では紅茶会社でテイスターとして勤務しており、そのご縁から声をかけていただき、2016年に設立されたUK Tea Academyで初代講師のひとりとして、お茶教育に携わるようになりました。
UK Tea Academyはその後成長し、現在は完全オンラインのプログラムへと移行しています。そうした活動の中で、「日本でも同じように世界の茶を体系的に学べる環境をつくりたい」と考えるようになったことが、ティーアカデミージャパンを設立する大きなきっかけです。
そこで2018年に、拠点はイギリスに置いたまま、日本で定期的に講座を開催する形でティーアカデミージャパンを立ち上げました。
当初はUK Tea Academyのライセンス校として、本国と同じプログラムを日本語で提供し、修了後にはイギリス本部発行の英語の修了証・資格を付与していました。
――UK Tea Academyをルーツに持つ立ち位置として、現在はどのように位置づけて発信されていますか。その背景も教えてください。
本国が完全オンライン化したことに加えて、イギリスと日本の物価・為替レートの差が大きくなってきました。同じ内容をそのまま輸入すると、受講料が高くなり、生徒さんの負担が大きくなってしまう懸念があったんです。
そこで2025年半ばからは、UK Tea Academyとは知見を共有しながら、日本の状況に合わせた形で教育を提供しています。
とはいえ、私自身はいまもオンライン版UK Tea Academyで講師を続けています。対面で行っていた頃と比べてもカリキュラムの核となる部分はほぼ同じです。
グローバルに通用する視点と、日本に根ざした学びの両方を大切にしているイメージですね。
――ティーアカデミージャパンならではの特徴や、大切にされている理念は何でしょうか。
ティーアカデミージャパンで目指したのは、一種類に特化するのではなく、世界のあらゆる茶を俯瞰的に学べる場をつくることです。
今は「スリランカ=紅茶」「日本=緑茶」と単純に区別できる時代ではありません。日本で紅茶が作られ、スリランカで煎茶が生まれるように、各国でさまざまな茶類が生まれています。
だからこそ、紅茶・緑茶・烏龍茶・白茶・黒茶など、多様な茶を正しい知識で横断的に理解しておくことが現代には必要だと考えています。
世界の茶を“横断的・論理的”に学ぶ。2つのコースの特徴

――現在提供されているコースの概要と、それぞれどのような学びが得られるのか教えてください。
ティーアカデミージャパンで提供しているのは、大きく分けて2つのコースです。
1つ目は初級の「ワールドティーエッセンシャル」。
世界の茶を横断的に学ぶ入門コースで、お茶について何も知らない方でも安心して参加できます。茶とは何か、紅茶と緑茶・白茶の違い、分類や製造工程などを論理的に理解し、幅広い茶の基礎を体系的に身につけられます。
2つ目は中級の「ティーソムリエ」。
ワールドティーエッセンシャル修了後のステップアップとして設計され、より深い知識と実践を求める方向けのコースです。
初級でも20種類以上をテイスティングしますが、中級ではさらに種類が増え、日本では流通量の少ないケニアのパープルティーなども扱いながら理解を広げていきます。
――学び方のスタイルも、オンラインと対面を組み合わせた形式になっているそうですね。
もともとはすべて対面でしたが、学びの質と参加しやすさの両立を目指し、座学はオンラインで理解を深め、実習は対面で集中的に行う形にしています。
オンラインではテキストを読み進めながら、要所にミニテストが入る構成で、理解度を確認しつつ学習できます。必要な部分は何度でも見返せるため、試験準備にも活用しやすい設計です。
対面はワールドティーエッセンシャルが1日、ティーソムリエは3日間。講座の最後には修了試験があり、合格者には修了証をお渡ししています。
生産者からIT企業の会社員まで。受講生の多様なキャリアと広がる活動
――どのような方が受講されることが多いのでしょうか。
紅茶教室やカフェ、ホテルで働く方、茶生産者の方のほか、IT企業やコンサルティング会社に勤める会社員など、受講者の職業はさまざまです。
「お茶が好きで学んでみたい」という方から、「副業や将来のキャリアの軸にしたい」と考える方まで参加されており、講座内でも異なる視点が交わっています。
――これまでの受講生の中で、特に印象に残っている事例があれば教えてください。
煎茶を中心に製造していた生産者の方が、「和紅茶を作りたいが分からない」と受講されたケースがあります。
その方は講座を通じて他の茶類への理解を深め、白茶づくりにも挑戦されました。もともと日本の生産者は技術が高いこともあり、そのお茶はコンテストで受賞しました。
ほかにも、通関業務に携わる方が「中国から届く茶葉の違いを理解したい」と参加されたり、ワインソムリエが次の知識としてお茶を学びに来られたりと、背景はさまざまです。
さらに、すでに教室を運営している先生が情報のアップデートを目的に受講されることもあれば、ドイツの方で「試験は英語で受けたい」と参加される方もいました。
仕事で活かしたい方が多い一方、全体の3割ほどは純粋に趣味として学ばれている印象です。
また、面白いのは、初心者の方が試験で高得点を取ることも少なくない点です。先入観がない分、論理的な説明をそのまま吸収しやすいのかもしれません。
一方で、長く紅茶教室を運営してきた方ほど「ここが違っていたんだ」と新しい発見を持ち帰られます。初心者も経験者も、それぞれに気づきや学びがある講座です。
初心者も上級者も、安心して学べる講座づくりの工夫
数種類の茶葉について学びます。
――初心者の方でも安心して学べるように、講座設計や運営の中で工夫されていることがあれば教えてください。
根底にあるのは、イギリスの講座スタイルです。
講師が一方的に話し、生徒が黙ってノートを取る形ではなく、疑問があればその場で気軽に質問できる雰囲気を大切にしています。初回には「途中で止めていただいて大丈夫です。疑問に思ったらすぐ手を挙げてください」と必ずお伝えしています。
「こんな質問をしていいのかな」と遠慮する必要はありません。ひとつの疑問が、他の受講生にとっても理解を深めるきっかけになるはずです。
また、リラックスして学べる雰囲気づくりも大切にしています。
1日に20種類近いテイスティングを行うこともあり、空腹のままでは胃に負担がかかることがあります。そこで「講座中にお菓子を食べても大丈夫ですよ」と最初にお伝えし、体調を崩すことなく集中できる環境を整えています。
日本では「講師の前で音を立てるのは失礼では」と感じる方もいますが、無理をせず快適に学んでほしいという意図です。
――学び方の工夫もされていますか。
講義ではスライドを使用しますが、内容はすべてテキストとしてお渡ししているため、受講中に無理にメモを取る必要はありません。「書きとめている間に大事な説明を聞き逃す」といった心配がなく、目の前の説明に集中できるようにしています。
ティーソムリエコースでは、プロが使うカッピングセットを扱う練習も含め、実習で手を動かす時間をしっかり確保しています。
テイスティングでは「どんな香りか」「どんな味わいか」を言葉にし、フードペアリングでは3種類のお茶と複数の食べ物を組み合わせます。そのうえで、受講生自身が「なぜ合うのか」という理由まで体験を通して理解していきます。
資格で得られるのは、知識以上の“自信”と“つながり”
――これからお茶を体系的に学びたい方や、資格取得を検討している方へ。ティーアカデミージャパンで学ぶ魅力や、学びを通して広がる可能性についてメッセージをお願いします。まず大きな魅力は、「自信が持てるようになること」です。ティーアカデミージャパンでは、経験や感覚だけではなく、科学的根拠や世界的な共通認識に基づきながらお茶を学びます。
そのため「誰かが言っていたから」ではなく、自分の言葉で説明できるようになります。
次に、「自分の立ち位置や強みが見えてくること」です。生産者なら日本茶が世界の中でどう評価されているのか。ティールーム勤務なら、自店の価値をどう伝えられるか。世界の事例を知ることで、今後伸ばす方向性も見えやすくなります。
また、ティーソムリエ資格はUK Tea Academyが母体のため、海外でも説明しやすい資格です。とはいえ大事なのは肩書き以上に中身。言語が伴えば、どの国でも知識を応用し、最新情報を理解できる力が身につきます。
そして何より、学ぶことで世界の見え方が変わります。
講座をきっかけに、旅行先で茶園を訪れたり、現地の人がどんなお茶を飲んでいるのか確かめに行ったりと、学びが行動につながるケースも多くあります。身についた知識が、日常や旅先での体験をより豊かにしてくれるはずです。
正しい知識に裏打ちされた“自由な楽しみ方”を身につけ、自分なりのお茶の世界を広げていきたい方に、ぜひ来ていただけたらうれしいです。
世界の茶を体系的に知ることで、楽しみ方が増える。日々の一杯に新しい発見を
今回の取材を通して、お茶は産地や製法、文化の違いを知るほどに、楽しみ方が豊かになる飲み物だと実感しました。ティーアカデミージャパンの講座は、そんな“お茶の世界の広がり”を論理と体験の両面から深く味わえる場です。せっかくなら、いつもの一杯に少しだけ好奇心を添えてみる。産地や製法に目を向けるだけで、味わいの感じ方は大きく変わっていきます。その小さな気づきが、旅のきっかけになったり、学びを深める機会につながったりすることもあるでしょう。
「お茶が好き」からもう一歩進みたい人にとって、ティーアカデミージャパンは心強い学びの場になるはずです。
なお、今年最初の初級講座「ワールドティーエッセンシャル」は、現在お申し込み受付中とのこと。
事前にオンライン講座で基礎を学び、4月18日(土)に対面講座と資格試験を行う構成です。
※開催日の詳細は公式ページをご確認ください。
取材を通して感じた「世界の茶を横断的・論理的に学ぶ入り口」を、実際に体験できる機会です。周囲にお茶に興味のある方がいらっしゃいましたら、選択肢のひとつとして紹介してみてはいかがでしょうか。